「民衆経済の中のランドリー」(2005.7.18)
モナスの北東角に接するイスティクラルモスクの西側を高架鉄道線路が走っている。そこから一番近い駅がジュアンダ駅。パサルバルからもつい目と鼻の先だ。1970年代にそのジュアンダ駅が造られたとき、線路脇にあった家がたくさん強制撤去された。そのとき家を失って以来、今46歳のタルワシは高架鉄道橋の下に住み着いて暮らしてきた。そこにもう4人の中年女性たちが住みつき、いっしょになってビジネスを始めた。ビジネスの元手は、たらい、バケツ、炭を入れて熱するアイロン、そしてダンボールに数枚の布。実は、やっているのはランドリービジネスなのだが、このご婦人たちは「とんでもない」と否定する。「わたしらがやってるのは、cuci-gosokですよ。」との言葉。cuciは洗濯、gosokはアイロンでこすって火熨しをすること。
ジュアンダ駅を通るのは中流以下の人たちだ。しかし底辺経済層にいても、きちっとして小奇麗な服装をする必要がある人たちも少なくない。路上物売り、カキリマ商人、商店の店員、モスクの番人など、かなり多くの人たちがかの女たちのお得意さんになっている。近隣の住民の中にも、かの女たちのサービスを利用する人がいる。駅にはトイレ・マンディ場があり、洗濯用水はそこから調達する。たらい二つ分の洗濯に要する水代は5千ルピア。干し物は駅の仕切り壁にひもを張ってそこに掛ける。熱帯の暑い陽射しの中に置いておけば、二時間もあれば乾いてしまう。そしてアイロンだ。少しでも香りがあるようにと、買ってきたアイロン用芳香液を噴霧しながらしわを伸ばす。
料金は、スーツつまり上着とズボンのセットで5千ルピア。しかし超お買い得サービスも用意されている。中サイズのたらいひとつ分で2万ルピア。この場合は洗剤が客負担になる。つまり客は洗い物と洗剤をそこへ持ち込むというスタイルになっている。このランドリーは24時間オープン。いつも5人のおばさん方の誰かが起きていて、仕事をしている。一日働いて手元に残るのは1万5千ルピア程度。底辺経済層の中で行なわれるそんな経済活動で、多くのひとびとがジャカルタのサバイバルを続けている。
「美しき家族愛の絆」(2005.7.11)
自分の娘と近親相姦の関係を続けていた父親をその妻が警察に訴えた。東ジャカルタ市クラマッジャティのバトゥアンパルに住むフシン・バ・アブド55歳は訴えによって警察に拘留され、取り調べを受けているが、自供によれば実の娘CA22歳とJI17歳との間で性交を「たった!」7回行ったとのこと。CAとは1回だけだが、JIとは12歳のときから6回だそうで、父親にそのようにされることに娘たちもまったく嫌がるそぶりを見せなかったからだ、とフシンは主張している。このフシンはイスラムの教え通りに三人の妻を持ち、子供は総勢15人。普段はマランで第三妻と一緒に暮らしているが、バニュワンギの第一妻、ジャカルタの第二妻への訪問は欠かさないそうだ。ジャカルタへ来ると、部屋にいる娘についむらむらとなって過ちを犯した、とフシンは正直に認めている。第二妻がその事実を知らなかったのは、たいてい買い物や用事で昼間外出しているときにそのむらむらをやったからで、結局はそのむらむら行為も去る1月にJIが母親に訴えたため、第二妻の知るところとなった。しかし、そのときは第二妻も子供たちもみんな父親を赦して麗しい家族愛の絆を再び確かめたとのこと。ところがなんと今回に限って、フシンのジャカルタ訪問が忙しさにまぎれて遅れてしまった。すると第二妻がマランの第三妻に電話してフシンの様子を聞き、激怒のあげくジャカルタへやってきたフシンを警察に突き出したというのがこの事件の顛末。
「夢の重圧か?自殺未遂!」(2005.7.4)
ブカシ県チビトン市場で荷物運びクーリーをしている20歳の青年ニルワン・ジェゴンが6月27日、高さ45メートルの高圧送電鉄塔によじ登った。かれは自殺志願者だ。
こうなる前、かれは二週間に渡って毎晩同じ夢を見た。夜疲れて眠ると、トゥユルがやってきてニルワンのペニスを引っ張るのだ。トゥユルというのは異界の生物で坊主頭の子供の姿をしており、自分を飼っている人間が他人の金を盗んで来いと言い付ければ、姿を隠してそれを行ったりする。性的に潔癖なことが建前になっている社会で恥部をもてあそばれることは、きっとニルワンにたいへんな心的重圧をもたらしたに違いない。それが二週間も続いたために、かれは疲れ果ててしまった。26日、ニルワンは意を決して母親にその話を切り出した。母親は、これは息子が結婚したがっていることの暗示だろうと理解し、すぐに行動に移した。しかしニルワンにはそれを喜んでいるフシが見えない。
ひょっとして息子はビョーキなのでは、と思った母親は、近在の超能力者に見てもらうことにした。27日、オランピンタルがかれの家に来た。ニルワンは「ちょっとションベン」と言って家を出たがいつまでたっても戻ってこない。探しに出た家族が見つけたのは、少し離れた場所にある高圧送電鉄塔の根元に人だかり。みんなが見上げている上を見ると、なんと鉄塔のはるか上の方にニルワンがいるので驚いた。
村の乙名と青年団が、あいつをおろさにゃなるめえ、ということで話が決まり、若い衆が8人、鉄塔の脚四本に取り付いて登り始めた。さあこれは見もの。およそ5百人の観衆が固唾を飲む間、フィヤファクターなど顔色なしのシーンが展開される。上に上がった若い衆はニルワンを説得するが、暗い目をしたニルワンは黙っているだけ。結局話しじゃだめということになって、実力行使が始まった。四人が四方から同時にニルワンを押さえにかかる。捕まるまでまるで魂が抜けていたようなニルワンが暴れだすが、ほかの四人も転落しないようにとガードする。45分かかってニルワンは地上に担ぎ下ろされた。おかげで死人は出なかったが、はてニルワン君、この先いったいどうなるのか・・?
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