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ジャカルタドライバー考

第3回 (2005.11.29)

交通法規が共通規範として機能していないのなら、さぞかし交通事故は日常茶飯事だろう、と誰しも想像するところだが、インドネシア人運転手の運転する車に乗ってヒヤリ・ハットを何度か経験し、それでも事故に遭わずまたあまり事故現場を目撃することもないために、「意外に事故は少ないじゃないか。」と感心したようにおっしゃる方がいる。確かに、いたるところ衝突や接触事故の続出という市街戦のような光景に出くわすことはないのだが、それでも交通事故が少ないと言うインドネシア人はいない。1995年から1999年までの統計を見ると、全国で一日平均交通事故死亡者数は30人、重傷者24人だったが、2003年一年間の統計は一日平均交通事故死亡者数が71人となり、その54%がオートバイ運転者となっている。もっと新しい2004年の統計を見ると、全国の総交通事故件数は17,732件で、そのうち14,223件がオートバイがらみとなっているから、もし自分で運転する場合には、オートバイと関わり合いにならない方が無難だ。とはいっても、去年は4百万台近くも売れたオートバイが大集団となって路上を右往左往しているのだから、そのうち自動車専用道路以外には走れるところがなくなるかもしれないが。

わたしたちが目する現実は確かに交通法規が機能していない交通環境であり、それを否定する気はわたしに毛頭ないのだが、無法地帯だから秩序が存在しないということにはならないとわたしは思う。法による統制を文明社会としての秩序という意味合いでおっしゃっているのであれば確かにそれは見当たらない。しかしどれほどの無法地帯であっても、あるいはジャングルであっても、秩序を生み出す原理は常に存在するのであり、インドネシアの交通環境に棲みついている交通法規を超越した原理はおいおいお話しするとして、行政が定める法規が社会を統制できていないというこの事実は、交通環境のみならずインドネシアにおける生活全般にわたっての真理ではないかとわたしには思えるのだが、読者の皆さんのご意見はいかがだろうか?

そんなジャカルタにお住まいの皆さんはふだんからインドネシア人運転手のお世話になっているに違いないが、毎日あなたを乗せて目的の場所まで運んでくれる運転手は、果たしてジャカルタ・ドライバーなのだろうか。

交通法規や交通道徳を守り、安全運転を行なう運転手をお求めのトアンやニョニャには、決してジャカルタ・ドライバーとは折り合いがつかないに違いない。ジャカルタの地理を知らない、走りがトロトロしていてすぐ他車を割り込ませる、いつも同じルートばかり走りたがって渋滞を避けようともしない、ドライビングテクニックがどうもお粗末であれなら自分の方がマシだ、などと運転手のご不満話しを耳にする機会も多々あるのだが、そのようなネガティブポイントを消去していったあとに浮かび上がってくるドライバー像はジャカルタ・ドライバーの可能性が高いから、きっとそれは贅沢な不満なのだろう。

うちの運転手はどうやらガソリン代をくすねているみたいだ、と疑心暗鬼をかきたてられているトアンやニョニャもいらっしゃるようだが、車ごと持ち逃げされないだけまだマシかもしれない。ジャカルタの地理をしっかり勉強し、トアンやニョニャに喜ばれるポイントを身につけた運転手を仕立て上げ、雇い主にうまく採用されるや数日後には車ごとトンズラする自動車窃盗団もいるし、盗まれた自動車の後処理にえらい金がかかるという話もあるので、ものごとはすべて程度問題と考えた方が良いかもしれない。そのあたりのニュースはインドネシア情報ラインというサイト内に記事があるので、興味をお持ちの方はそちらをどうぞ。

             < http://indojoho.ciao.jp/newsmenu0502.htm >
     「お抱え運転手採用にはご用心」(2005年2月12日)
     「自動車盗難処理は安くない」(2005年2月9日)

 (文・西祥郎)

ジャカルタドライバー考は西祥郎さん提供です。
西さんのインドネシア情報ラインはこちらをどうぞ

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