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ジャカルタドライバー考

第6回 (2005.12.20)

ジャングルを統治しているのは弱肉強食原理であり、いきおい歩行者よりも自動車優先となり、そして乗用車よりも大型車両が優先となる。ところがそれとクロスするかのように、弱者保護原理がその脇をかすめる。

歩行者にとっても交通法規はないも同然。キングオブザロードたる自動車が守らないのだから、歩行者に守れるわけがない。そもそもドライバーに比べて歩行者のほとんどが交通法規を理解していないのは、ドライバーなら運転免許証取得試験がらみで多少の交通法規と接点を持つものの、歩行者にそんな機会はどこを探してもないのだから、これは理の当然。しかし最近のニュース(「交通安全遵法作戦(その二)」2005年12月1日〜http://indojoho.ciao.jp/newsmenu0512.htm)によれば、場所だけはチブブルに用意されたということらしい。ともあれ、だからかれらの路上通行は単純に人間的な原理に従って行われている。道路の横断が必要な場合、ゼブラクロスの有無など関係なく、ビュンビュン走ってくる車の間隙を縫って押し渡る。ジャカルタへ来て間もない方は、横断しようとする歩行者が走っている自分の車の進路に近寄ってくるのを目のあたりにして、度肝を抜かれたことがあるにちがいない。おまけに、自分ならきっとブレーキを踏んで車を停止させるのに、と思うあなたを尻目に、スピードをゆるめもしないで平然と突っ込んでいく運転手にまたまた驚かされたのではあるまいか。

ひとりで渡れないような道路幅と交通量のある場所では、歩行者たちが徒党を組んで道路を押し渡る。こうなれば反対に、そこには横断歩道も、ましてや信号機もないというのに、走ってくる車は停止せざるを得ない。

交差点でもそうだ。目の前の信号がグリーンであるにもかかわらず、自分の目の前を歩行者が横切るので、先頭の車が発進できないということはよく起こる。車が流れ始めても、また別の歩行者が横切ろうとして車を止めるから、そのうちに信号が赤に変わってその交差点を通り抜けるのにたいそう時間がかかったりする。自動車側の信号が赤からグリーンに変わっているのに歩行者がそこを横切ろうとし、そんな場所に限って車は歩行者を優先させるという、よその国では考えられないような現象が起こるのも、交通法規とは無縁のところに存在している原理がインドネシアで路上の秩序を形成しているからだろう。

歩行者が自動車の流れに何の意も用いていないことは、さまざまな実例が示している。バス停でない場所でバスに乗降するのは普通のこと。特にひどいのは、交差点の中や交差点を越えた場所でバスに乗る人々だろう。信号がグリーンに変わって車が流れ始めたと思ったら、そのあとすぐにまた止まってしまう。バスが客を乗せるために止まるので、後続車両は止まらざるを得ない。そうこうしているうちに信号は赤に替わる。そんなありさまだから、バスやアンコッがいれば、信号がGOに替わっても、その交差点を越えられる車は数台しかない、ということが起こることも頻繁だ。

タクシー利用者も、道路状況など関知せずに車をひろうために、混雑する片側二車線道路にはすぐに交通のボトルネックができる。そして場所がショッピングセンターへの進入路入り口であっても、乗客はそこをふさぐ位置にタクシーを停めさせて降りようとする。のんびりとタクシーの乗客が金を払っている間、ショッピングセンターに入ろうとする自家用車が大通りを団子になって占拠し、こうしてその周辺の交通は止まってしまうのである。ふだんの暮らしの中であれほど気配りに長けたひとびとが世間の中で見せるこの落差には、誰でもわが目を疑ってしまうにちがいない。

  (文・西祥郎)

ジャカルタドライバー考は西祥郎さん提供です。
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