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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part10 最後の大決戦、果たして奇跡は起こり得るか?(後)その2(2005.11.16)

ところ変わってここは皇居内吹上地区、そこにあるのは天皇皇后両陛下が居住する屋敷、御所。皇宮警察の厳重なる警備にもかかわらず、そこに忍び寄るひとつの影。屋敷付近を警備する警察官数名、「うっ!」と呻き声を発したかと思えば、どどっと崩れ落ちて行く。彼らの首筋には吹き矢の針。ほぼ全員が眠り込んでしまった。

「陛下、お目覚め下さい」どこかで聞き覚えのある小声、天皇陛下を呼び起こす。
「誰ですか、あなたは?」目を覚まされた天皇陛下、控え居る全身黒装束のマスクを被った侵入者に、至極落ち着き払った御対応。この侵入者、大室直吉老人の従者・赤影である。さてこの赤影、大和の中でも脱がなかったマスクを、目の前にいらっしゃる天皇陛下の御前で、さっと一脱ぎ、初めてその正体を現した。
「おお、君は、たしか俳優の……?」これにはさすがに驚かれて
「恐縮でございます。私は、戦国時代より時の権力者を影より支えてきた一族『影の軍団』領主、第五十二代服部半蔵でございます。俳優業は仮の姿、浮世名を千葉俊一と申します」
「あなたの出演されている番組は何度か拝見しました。柳生十兵衛ははまり役でしたねえ。で、そのあなたが私に何の御用でしょう?」
「恐縮でございます。我ら影の軍団は現在さる御老人に仕えております。その御老人より密書を預かり持参致しました」
「察するところ、その御老人とは大和の大室直吉翁でいらっしゃいますね?」
「その通りでございます」
と言って、天皇陛下にその大室直吉老人からの密書を手渡した。陛下、その密書を御開封、最後まで御丁寧に読み終えた。

密書全文:
夜分に突然の御無礼を平に御容赦願います。
終戦後順調に国家再建を果たした日本も、ここ数年は未曾有の政治危機・経済危機に陥り、明日にも国家が壊滅し兼ねない最悪の事態を迎えております。せめてこの死に損いの老い耄れなりに何かできることはないかと大和なる破天荒な試みを致しましたが、力ここに及ばず、この密書を差し上げることに相成りました。
本来なら日本国民が一丸となって克服すべき非常事態であるとは重々承知しております。しかし私ども凡庸の力だけでは、これを乗りきることは不可能。そしてもう一刻の猶予もないほど。議会は機能を停止し、民主主義により国策が決定することはなし。この状況を打破するには、もう天皇陛下のお力を拝借するより方法はございません。
国家の安寧・国民の幸福だけを考えていらっしゃる陛下の御心中、この死に損いにも察するに余りあり。もしお力を貸してもよいと仰せられるなら、この老い耄れ望外の喜び。その場合、委細は全てこの密書を持参した者に伝えてあります。ぜひ御勇断下されませ。
硫黄島大和・大室直吉

これをじっくり読まれた天皇陛下、畏まる千葉俊一に向かって
「さて委細をお伺いしましょうか」
恐縮しながら直吉老人の言葉を伝える千葉俊一、それに頷きながら相槌を打たれる天皇陛下――
「ふん、ふん、……、はい、……、ああ、そうですか、……、あっ、なるほどね」
で、すべて聞き終えられ、千葉俊一に仰せられたお言葉は――
「はい、わかりました。と大室直吉翁にお伝え下さい」

またまたところ変わって、ここは田園調布超高級住宅街にある大物政治家・元内閣総理大臣高曽出安伊予の私邸。ここにも忍び寄るひとつの影あり。黒装束に青縁取りのマスク、大室直吉の従者・青影であった。青影、高曽出安伊予の寝室に忍び込み、彼を静かに呼び起こす。

「高曽出元首相、お目覚め下さい」
ぱっと目を覚ました高曽出、不審侵入者に一向慌てず――
「おお、そのマスクは……。大和御老人の御使いか?」
「その通りでございます。私は大和に従う『影の軍団』第五十二代服部半蔵手の者」
と言うと、ぱっとマスクを一脱ぎ、高曽出元首相の前にその正体を現した。
「おお、君はたしか俳優の……」
「真田広でございます。俳優業は世を忍ぶ仮の姿。正体は硫黄島大和の秘密諜報員でございます」
「さしずめアメリカのCIAといったところだな」
「そのとおりでございます」
「で、その大和が私に何の御用かな?私は既に隠居している身、政局には一切顔を出さんようにしている。日本の危機は十分承知しておるが、いまさらこの老い耄れに何ができよう」
「大和の大室直吉老人より密書を預かっております。それを持参致しました」
「密書とは――。ちょっと見せてもらえるか」
高曽出元首相は密書を受け取ると「ふむふむ」と言いながらその内容を確認した。そして真田に向かい
「よし、わかった。身支度するから暫く待っていてくれ」


以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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