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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part10 最後の大決戦、果たして奇跡は起こり得るか?(後)その8(2005.11.22)

天皇陛下御登場:
国民の皆さん、御苦労様でした。そしてありがとう。諸君の努力と勇気のお陰で、日本が一丸となり新しい平和国家を創造する基礎ができ上がりました。『一部の良心ネットワーク』の皆さん、これからの日本を宜しくお願いします。そして旧日本政府を背負っていた政治家の皆さん、官僚の皆さん、そして日本政府に仕えていた皆さん、今日まで本当に御苦労様でした。ほんのちょっとしたボタンの掛け違いで、いつの間にか日本がこんな事態になってしまったのですね。もう一度ボタンを外し、始めからやり直しましょう。
もう争いはたくさんです。皆さん、日本人同志で争うのは止めましょう。日本人同志で争っている間は、とてもアジアの平和、世界の平和は達成できません。旧政府は新政府を恨まず、新政府は旧政府の功績を称え、仲良く新生日本を作り上げていって下さい。それとこの場をお借りしてもう少し……。
私のために戦ってくれた右翼の皆さん、皇軍と称して戦ってくれた右翼の皆さん、いままでありがとう。今後は私のためにではなく、新生日本を応援して下さい。私の応援はもう十分頂きました。本当にいままでありがとう。
それと革命を夢見る左翼の皆さん、もう革命は達成されました。あなた方の理想とする世の中が一歩でも近づくように、今後は『一部の良心ネットワーク』に合流し、ともに新政府を盛り立てて下さい。もし私ども天皇家が新生日本を造るのに邪魔であれば、そして天皇家のために争いが起きるとしたら、これ以上悲しいことはありません。遠慮なく天皇家を潰して頂いて結構です。私ども天皇家は一般の民間人となっても構いません。
皆さん、私ども天皇家の願いは『世界が平和であり、日本は、国民が争うことなく、いつまでも平和に幸福に暮らせる、心豊かな国であり続ける』ことです。もし私ども天皇家を尊んで頂けるのでしたら、争いは止めて下さい。私どもが最も悲しむ争いは止めて下さい。お願いします……。
それでは最後に私から皆さんに贈り物があります。新生日本誕生門出を祝いお贈りします。以前から私個人が考えていたことです。日本にはもっと相応しい国歌があるのではないかと。もし今から御披露する歌が気に入らないのでしたら、新しい国歌を作って下さい。君が代をそのまま使って頂いても結構ですよ。それではお願いします。

国民は驚いた。いや驚いたなんてものじゃなかった。天皇陛下自らが「天皇家は一般の民間人になっても構わない」と仰ったのである。それだけではなく新しい国歌まで提供すると仰ったのだ。国民はなんだか訳がわからなくなってしまった。自分達は何の目的でここに集まっているのかさえ理解できなくなった。そしてさらに国民のみんなを「ええっー!」と驚かしたのが次の映像――

それが、天皇陛下の次に新国歌披露のため登場した――これが日本人なら誰でも知っている、芸能界を引退して既に久しい、そして引退後は二度と公に姿を現すことのなかった国民的人気歌手――山口桃恵であった。俳優三浦智樹との結婚を機に二十一歳の若さで、すべての国民から惜しまれ引退した、伝説の国民的人気歌手。もう二度と公で歌うことはないだろうと信じられていた、日本芸能界のスーパースター。その山口桃恵が引退後始めて国民の前に姿を現したのである。

「心を込めて歌います。よろしくお願いします」
そして流れてきたメロディーは、どこかで聞いたことのある旋律――慎ましく静かに桃恵は歌い出した。
「知らず知らず、歩いて来た。細く長いこの道……」
そう、これこそまさに国民的名曲、故美空雲雀の『川の流れのように』であった。

『川の流れのように』

知らず知らず 歩いて来た
細く長い この道
振り返れば 遥か遠く
故郷が見える
でこぼこ道や
曲がりくねった道
地図さえない
それもまた 人生

ああ 川の流れのように
ゆるやかに
いくつも 時代は過ぎて
ああ 川の流れのように
とめどなく
空が黄昏に 染まるだけ

生きることは 旅すること
終わりのない この道
愛する人 そばに連れて
夢探しながら
雨にふられて
ぬかるんだ道でも
いつかは また
晴れる日が来るから

ああ 川の流れのように
おだやかに
この身を まかせていたい
ああ 川の流れのように
移りゆく
季節 雪どけを待ちながら

ああ 川の流れのように
おだやかに
この身を まかせていたい
ああ 川の流れのように
いつまでも
青いせせらぎを 聞きながら

山口桃恵、涙を湛えての大熱唱。その映像に人々は心打たれ、そして歌詞も画面上にテロップで登場したものだから、日本全国お茶の間で、街角で、大型スクリーンのある大通りで、国会議事堂で、ポータブルテレビを持ち込んだ連中の間で、それこそ日本中で『川の流れのように』の大合唱。国民のほとんどが
「なぜ私はここにいるんだろう?」
と集団催眠が解けたような感じになり
「政治家を死刑にしろ!自民党本部を襲撃しろ!」
なんて言ったことは、もうどっかに置き忘れ、あれほど怒り猛っていた感情は、宇宙の遥か彼方に消え去ってしまった。
日本人の心はひとつとなり、すべての国民が自らの勝利そして新国家誕生の瞬間を体現した。そして戦前は現人神と国家の出汁に使われ、戦後はただの象徴といいように扱われた天皇御一家は、その瞬間、日本全国民より心から尊敬され慕われる、日本精神の権化となったのである。


以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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