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| Part2 大和、分離独立を宣言する〜その2 (2005.8.24) |
平成十×年◎月△日正午きっかり、ほぼ時報とともに、マスコミ各社(新聞社、テレビ局、ラジオ局、大手出版社など)や官公庁へ、一斉に一枚のファックスが送られてきた。インターネットの人気掲示板にも一斉に書き込みが行われた。その内容とは――
新国家『大和』分離独立宣言
現在、日本は国賊に支配され、悪徳政治家・悪徳官僚のみならず一般国民までも私利私欲に走り、時遅く病膏肓に入り、滅びるは必定。既に昔日の面影はなく、ただ亡国を待つのみ。ただ沈み行く祖国を思い、せめて日本古来の文化とも精神とも呼ぶべきものを残したい一存で、小笠原諸島妾島および有志近隣島を、新国家『大和』として、日本より分離独立することを宣言する。
平成十×年◎月△日
小笠原諸島妾島住人・大室直吉および有志近隣島住民一同
※新国家独立にあたり初期入植者を募集致します。詳細は明後日正午より友好都市小笠原父島の村役場前公園にて、代表者大室直吉老人により発表されます。マスコミの方にも取材をお願いしますが、万一マスコミに無視された場合でも、インターネットライブにて全国各地に発表・放送されるので御安心下さい。
最初それを目にした者は、まず「冗談だ」と思った。少し古めかしい宣言文を胡散臭く感じ「右翼のいたずらではないか」と言う者もいた。マスコミも相手にしないでおこうと決めかけたが、取り敢えず政府や都庁に連絡、真偽のほどを確かめた。
「冗談に決まっているだろう」と福田マスオ官房長官が、都庁に連絡を入れてみたところ――
「いま小笠原支庁と連絡がつきました。本当です。明後日正午より村役場前の公園で、大室直吉なる老人により、独立に至る経緯および独立国の概要、そして初期入植者の募集要項を発表するそうです。間違いありません」
福田官房長官は慌てて電話を切った。その様子を見ていた官邸職員全員が、アルバイトの整理係が、掃除のおばさんが、出入りの岡持ちが――
「こりゃ、えらいこっちゃ!」
都庁・官庁にはひっきりなしに問い合わせがやってくる。マスコミ各社も大混乱。テレビやラジオで一斉にそのニュースが伝えられ、すべての放送局が特番を組み、小笠原の新国家『大和』分離独立宣言を大々的に取り上げた。「今すぐ小笠原に飛べ!」記者やレポーターは命じられるままに大慌てで小笠原へ向かった。大慌てといっても、船で丸一日かかるような場所なので、勿論空路をヘリコプターで(空港はまだないので)行くしか方法はない。
宣言の行われた明くる日、日本中が騒然とした。職場でも、学校でも、家庭でも、小笠原分離独立の話は、日本全国共通の話題になった。まだ何にもわかっていないうちから「小笠原に移住したい」と言う者も現れ、政府もその対応に大苦慮するのであった。
自民党首脳部が集合した官邸の一室――
「ただでさえ頭の痛い問題が山積みしているというのに」
そうぼやいたのは、山崎政調会長である。
「思いきったことをやるなあ。その大室直吉にあっていろいろ訊いてみたいもんだなあ」
と言うのは森田新総理。すかさず青木総務会長が咎める。
「何を悠長に。この事件がどれほど重大な問題かわかっているのかね?」
佳麗国会対策委員長が続けて
「もしこれを許すなら日本全国で独立問題が発生するやも知れん。地方の不満たるや、もうその下地は十分にできている」
それから鈴木外相と稼盗国土相が
「畜生、俺が外務大臣になったと思ったら、独立なんてバカなことしやがって」
「あんたはいつも『俺が、俺が』と自己中心的なことばかり言う。この騒ぎのお陰であんたの首が繋がったようなもんだ」
「それはあんたも同じじゃないか!」
「いい加減にせんか!内輪揉めしている場合ではないわい!」
二人の言い争いを最中幹事長が咎めた。鈴木と稼盗は、犬と猿、水と油、アラブとイスラエルほど仲が悪かった。北海道足寄町の貧農に生まれ、恫喝による金集めと世渡りで政務次官までのぼりつめ、最後のたたき上げと呼ばれた鈴木。東大法学部卒、代議士の父を持ち、外交官より政治家に転出、プリンス、次期首相候補とまで呼ばれた稼盗。そんな訳で稼盗は鈴木を生理的に嫌悪、鈴木も稼盗には憎悪さえ抱いていた。
今度は森与太郎防衛庁長官が
「小笠原のうどんはうまいのかなあ」
と意味不明な能天気なことを言う。一同しらっとしたところで、最中幹事長が
「案外この騒ぎで自民党非難が下火になるかもしれん。とにかく明日だ」
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以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。
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