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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part2 大和、分離独立を宣言する〜その5 (2005.8.27)

直吉老人は、また両隣のマスクマンを促した。さらにマスクマンが父島の協力者に合図を送ると、今度は百インチの大型テレビ一台と数十台の小型テレビ(といっても五十インチ)が聴衆の周りを取り囲んだ。

「用意できたかな。それでは新国家『大和』独立プロモーションビデオを上映しよう。わずか一時間程の上映じゃ。退屈はせんよ」
この映像はマスコミの中継機材を通じ日本全土に放送された。最初は馬鹿にしていた視聴者も食い入るように、この映像に注目した。

「新国家『大和』独立」のタイトル扉で、そのビデオは始まった。始まりとともに軽快な音楽、チャ、ラ、ラ、チャン、チャンと映画『炎のランナー』のテーマ局が流れ、「新国家大和!」とさわやかにナレーションが入る。ナレーションはテレビ番組でお馴染みの声優・矢島正樹(人気テレビ番組『クイズタイムシック』でのクイズナビゲーター、アメリカテレビ映画『スタートラック』カール船長の吹き替えで有名)であった。
ナレーションと軽快なBGMに乗せて、小笠原の自然、そこではしゃぐ子供達、幸せそうな老人、活き活きと働く人々が続々と映し出され、見る者すべてに好印象を与えた。

ナレーション:
皆さんはどんな国にお住まいですか?真面目に働くことが報われ、毎日を楽しく健康に過ごしていらっしゃいますか?日々狂人に怯えることなく、安心して街を歩いていますか?行政には搾取されず、不安のない老後をお過ごしですか?悪徳政治家・悪徳官僚・悪徳業者には牛耳られず、生活をエンジョイできていますか?
(この辺で暗いBGMが流れ、背広姿のベンチで昼寝するサラリーマンやハローワークに集まる求職者達の映像に切り替わる)
もともと日本人は「他人を思いやる優しさ」をもった心優しい民族でした。ところが終戦から現在に至るまで、一部の悪徳政治家・悪徳官僚・悪徳業者により、さんざん日本人は翻弄され、もはや亡国の一途を辿るのみとなっています。
(また明るいBGMに切り替わり、笑いの耐えない幸せな家族の映像)
真面目で努力する人なら誰でも幸せになれる――そんな素敵な国を造るために大和は独立しました。そして既に一部の人々が大和住民として、平和に暮らしています。
(働く人へのインタビュー)
「日本では会社勤めをしていました。営業成績もそんなに悪くなく、これといって落ち度もなかったのですが、突然リストラです。茫然自失としていたところ、知人の伝手で大和へやって来ました。これほど魅力的な社会が存在するとは夢にも思いませんでした」
(おばあさんへのインタビュー)
「本土から移り住んで、二年になります。ここの住民はみんな優しくて本当に温かい。一人暮ししておりますが、島の皆さんや直吉さんのお陰で、何の心配もなく余生を暮らしております。大和に来て本当によかったと思います」
(家々が映し出された。一見こぢんまりとしているものの、中はひろびろとして、家具や調度類はすべて整い、ほとんどの家電製品も並んでいた)
(大和国立病院院長へのインタビュー)
「大和国立病院は、現在考えられ得る最新の医療機器を備え、そして最高の医療スタッフで大和国民の健康を管理しています。どうぞ御心配なく大和へ移住して下さい」
(大和国立病院の診察室や診療の映像。院長の言うように最新の医療機器が揃っている。下手な大学病院顔負けであった)
画面が変わり今度は学校の様子――教室は森の中にある洒落た作りの高床式ロゴハウス(熱帯といえども涼しそう)。で、そのロゴハウスが何棟もあり、森が開けたところにはサッカーぐらいできそうな運動場。そしてそれは(過疎地域の学校のように)全校生徒が数名という小規模なものではなかった。一クラスは二十名ほど、いずれも活気あるユニークな授業で、退屈している子供はいない。先生が芸達者、しかも全員が話術に長けている。さらには目の前の聴衆のみならず日本全土が「あっ!」と驚く映像が流れた。体育の授業を、既に引退したプロレスラー、長州リッキーと前田阿修羅が指導しているのである。そして直吉老人の両脇にでーんと控えているマスクマンの体形がどう見てもその二人なのである。またインタビューに登場する校長は、誰にも馴染みのある禿頭、元新日本プロレスの山本小達であった。

(山本小達へのインタビュー)
「子供達にはね、本当に尊いものは何かといったことから教えてやるんだ。口先だけじゃなくてね。俺の経験を通して、いろんなものの見方や、人生とかね。礼儀とは何か、年長者への尊敬とは何かとかね。目線をまず子供達の高さに合わせて、あいつらの言うことをよく聞いてやる。それでね『お前ね、それは違うよ』とか諭してやるの。あんまり屁理屈捏ねる子供には『そんなに言うんだったら、俺と勝負するかっ!』って怒鳴ってやる。シュンとするのが可愛くてね」
(子供達へのインタビュー)
「先生がおもしろい。勉強が楽しい」(小学生)
「みんな仲が良くて楽しい。先生達がためになる話をしてくれる」(中学生)
「授業がユニーク、退屈しない。嫌いな理系科目が大好きになった」(高校生)
「本土から来たけど感動した。校長先生ほか全先生に感謝したい」(元不良中学生)
 ふたたび場面とBGMが切り替わり、ナレーションが続く。
ナレーション:どうでしたか、皆さん。大和で生活する人々は本当に活き活きしているでしょう。真面目に努力すれば報われ、日々生活に追われることがなく、老後もまったく不安のない、人々が安心して暮らせる平和な国、それが『大和』です。
(プロモーションビデオ終了)

公園にいる全聴衆はシーン――。それはやがてざわざわに変わり、その中から恐る恐る直吉老人への質問が再開された。

以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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