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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part3 日本政府、大和探索を開始する〜その10(2005.9.10)

それは巨大なテレビスタジオのようであった。テレビカメラがスタジオのあちこちに配置、十メートル以上も高さのある天井には巨大な照明器具がセットされ、直吉老人の側を大道具係が忙しく動き回る。老人の向こうにはスタジオが一望できるモニター室も見える。そこがスタジオ全体を管理するコントロール塔の役割をしているようだった。
「しばらくお待ち下さいよ」
そう言うと、すくっと立ちあがる直吉老人。二人のスタッフが駆け寄り老人の胸元に小型マイクを取り付ける。テレビカメラはその映像を捕らえ、いかにもこれは実況生中継であると余裕綽々の様子。
「どうやら準備はできたようじゃ。さあ、森田総理よ。これがまやかしであると思うかね。ビデオで作り物であると思うかね」
森田は声がでない。画面横に小さく(森田の)アップが映し出されるが、唖然としているだけであった。
「ここは大和暫定政府の基地でな。アメリカのペンタゴン(国防省)みたいなもんじゃ。そのモニター室はのう、このスタジオを管理しておるだけではないぞ。最新のレーダーシステムで、小笠原のどこに何が潜んでいるかすべてお見通しよ。自衛隊連合軍の位置もきっちり把握しておるよ。しかし護衛艦を八隻も派遣するとは、たかが海賊を退治するにしては、ちと大仰じゃのう。それに潜水艦二隻もな、ほっ、ほっ、ほっ。では、この建物を案内しよう。外観はまだお見せできんよ。いま踏み込まれたら一切パーじゃからのう」
そう言うと直吉老人はゆっくりその歩を進め、大和暫定政府基地を案内していくのであった。
多くのスタッフが忙しく行き来するその長い廊下には、数多くの会議室や講義室が並んでいる。ほとんどの会議室は扉の上に使用中の赤ランプが点灯していた。
「国家建設中じゃての。みんな忙しゅう働いておるわ。この会議室を覗いてみるとするか。どれっ」
と扉の小窓からその様子を覗いた。
「これは文化省の会議じゃなあ。文化省は『廃りゆく日本の文化を後世に残るよう保存し復古する』目的で設けられた役所じゃ。テレビカメラをちょっと入れてみようか」
ドアをそおっと開けて
「ちょっとお邪魔するよ。いやそのまま続けてくれい」
会議室にいるスタッフは十数名ほど、会議進行役を中心に各自が意見を交換する――どこにでも見られる光景か。と思っていたら、会議進行役あるいは講師とでも言うべき、その会議を主宰している人物が、ほぼ日本全国の人々が知っていると思われる、昨今引退した関西演芸会の雄、亀岡龍太郎であった。

森田総理、突如驚きの声――
「か、亀岡さんじゃありませんか!何でそんなところにいるんですか!」
亀岡にも聞こえたようで、マイクが向けられる。
「いやあ、久しぶりやねえ、森田さん、いや森田総理大臣。偉うなったなあ。元芸能人としてほんまに嬉しいよ。あんたの勇姿はここのモニター室でずっと見させてもろてます。頑張ってはんなあ」
「私のことはどうでもいいです。何でそんなところにいるのかお聞きしてるんです!(少々怒り気味に)」
「何でって……、見てわからんか?会議してんのや。廃れゆく日本文化をどうやって保存していくかっちゅう……」
「私が訊きたいのは、なぜ大和暫定政府基地に亀岡さんがいるのかということです。分離独立運動に加担する行為は犯罪ですよ」
「加担も何も、私はもう大和人ですよ。直吉爺さんと志は同じや。あんたこそ、つまらん国の総理大臣なんか、とっとと打棄って、早う大和に移住しなはれ!」
と、あまりにもびしっと言うものだから、森田総理、まったく言い返す言葉が出てこない。直吉老人は「失礼したな。では会議を続けてくれい」と文化省会議を後にする。次に直吉老人が案内したのは教育省講習会のようであった。
講義を聴いている者は数十名、直吉老人の話では全員が大和国立学校の先生である。独立プロモーションビデオに登場した山本小達、長州リッキー、前田阿修羅の面々も顔を揃えていた。講師の演説がおもしろいのか全員大爆笑、しかも頷きながら講義に耳を傾ける。そしてその講師を務めるのは、日本落語会の異端児、立川檀那であった。

「おーい、爺さーん、独立運動は捗ってるかあ?」
講義室前方より檀那のがなり声、直吉爺さん負けじと講義室後方よりさらに大声で
「おーよ、師匠。いま日本全国に宣伝しておるところよ。一言お願いできんかねー」
マイクが檀那に向けられ、カメラも檀那を追った。

「まあ、なんだねえ。日本はいま狂っちまってるわねえ。一体全体何が本物で、何が偽物か、まったく見分けがつきにくい世の中になっちまった。そんな時、この直吉爺さんが大和をぶっ建てると、大法螺吹きやがるもんだから、つい俺も調子乗っちまった。日本政府も情けねえわなあ。これだけあたふたするんじゃあなあ。この独立はほぼ成功すると見ているがね。俺の予感では九十五パーセント成功する、ただし成功予測はたったの五パーセントだけどな。さあ、日本全国の皆さん、移民枠は残りたったの九万七千人、早い者勝ちだよー!」


以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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