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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part3 日本政府、大和探索を開始する〜その11(2005.9.12)

さらに直吉老人、ひととおり基地を案内した後
「さあ、今度はエネルギー開発研究所と我が大和の誇る造船所をお見せしようかのう。とは言うものの、ここからはちと遠いもんでなあ。実は大和は一箇所ではない。何箇所かに散らばっておる。どこかはまだ言えんよ。そっちにカメラを回すとしよう。おい、準備はいいかい、研究所の林さんよ」
「はーい、準備オーケーでえーす」と素っ頓狂な、キャピキャピともがらがらとも区別し兼ねる女性の声が全国お茶の間に届いた。画面が直吉老人から、エネルギー開発研究所に切り替わる。そこに登場した女性アナウンサー、マイクを両手でしっかり握り、精一杯と思われる笑顔で、研究所の概要を説明した。ところでこの女性アナウンサー、世辞にも美人とは言いがたい、一目でわかるそのお多福顔、愛嬌の良さで世の謗りは免れている、直木賞作家の林真狸子であった。彼女の大和での役割は国防省広報である。

研究所には、巨大な大型タンクが配され、その周りを産業用ロボットが取り囲み、さらにそれを制御するコントロールルームには超大型コンピューターが数台。そしてブルーカラーの制服を纏う作業員、白衣を纏う研究者、合わせて数百人が忙しく働いている。大量に発生する天然ガスと微量に埋蔵されている石油を、最新の完全コンピューター制御変換装置を使い電気エネルギーに変換、大和全域へ供給しているのである。二十メートルもあろうかという大型タンクは唸りを上げ、そのエネルギー供給能力を日本全国に向けて、ひたすら誇示しているようにも思われた。さらに研究所内を移動していくと巨大ドッグが建設されており、そこでは海洋国家にふさわしい巨大船が完成されようとしていた。それだけではない。将来十万人で構成される都市国家に「二百パーセント自給自足できる農業環境」を熱帯の小笠原に作り上げる科学農業研究も進められていた。それらはまるで映画『007シリーズ』に登場する大掛かりな秘密基地のようであった。そしてそこで研究する人々の中にも、著名な科学者達が数多く含まれているのである。たとえばノーベル賞受賞の科学者は、野鯉良治(化学賞)、白子英樹(化学賞)、利根進(医学・生理学賞)らがいた。ほかに「EM技術」によって世界的に知られる琉球大農学部教授の日賀照夫、海の誕生を解明した『水惑星の理論』で世界の注目を集めた東大理学部地球物理学科教授の松井孝文などなど。規模・システム・研究者のいずれをとっても、どうだと言わんばかりの布陣である。そして極めつけは、研究所中央にある『原子炉』であった――

「あっ、あれは、原子炉ではないか!」官邸の別室、最中達は叫んだ。一般庶民には馴染みの少ない原子炉だが、政治家には見慣れた構造物である。

「おい、あれ原子炉だよ、たしか……」記者クラブの報道陣もざわめき始めた。

「ひょっとしたら、あれ、原子炉?」テレビを見ている一般庶民にもぼつぼつ気付くものがいて、官邸へ問い合わせてくる数も徐々に増えていった。最初大和に懐疑的であった国民は、その後好意的となったが、いま初めて大和に脅威を抱き始めた。これはもはや分離独立運動なんて生易しい言葉で語られる事象ではない。

 画面は再度直吉老人のいる大和暫定政府基地に切り替わった。そして再度森田も登場、画面は対談開始時と同じ、右半分に森田、左半分に直吉老人。
「森田総理、これで納得してもらえたかのう。儂は一切嘘なんぞ言っておらんぞ。それとも、さっきのは『撮影所で全部演出されたものだ』とでも言うつもりかえ?」
「……。いやそこまでは言いません。しかしあれほど大掛かりな施設や組織が、いまだに発見できないとは、納得がいきません。あなたは小笠原にあると仰る、しかし自衛隊の徹底探索でも見つからないのですよ」
「ぼうっとしておるんじゃろうよ。二、三日後には全容をはっきりさせるわい、所在地も含めてな。それまでは無駄な探索はお止めになることだ」
「ところでさっきの研究所ですが……、最後の方にちらっと映った構造物は原子炉ではありませんか?」
「おお、原子炉じゃよ。最新のエネルギー変換装置は開発したものの、それだけがエネルギー源ではちと心許ないでのう」
「ひょっとしたら大和は核兵器で日本政府を脅そうとしているんではないでしょうね?」
「そんなええ手があったかい。言われて初めて気付いたわ。ほっ、ほっ、ほっ。まあ、心配せんでええよ。そんな物騒なもの持っておらんわい。儂らはスペクターではないよってな。正々堂々と……とは言いづらいが、何とか分離独立を勝ち取ってやるわい。第一核兵器なんぞ作ろうもんなら、世界中を敵に回してしまおうが……。日本全国の皆さん、大和がまやかしでないことはわかってくれたじゃろう。それとなあ、大和への問い合わせが随分多いようなので、明日正午より第二回大和国家機構および初期入植者募集要項を発表するぞ。テレビでも流してほしいが、日本政府が怖気づいて放送中止命令を出しよるかもしれんからな。その場合はインターネットのホームページを覗いてくれたらええ。それではまた明日、お会い致しましょう。日本政府の皆さん、心してかかれよ。では」


以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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