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| Part3 日本政府、大和探索を開始する〜その3 (2005.9.2) |
疑いの目は当然父島・母島両島にも向けられた。大室直吉老人の語る大和はただの法螺またはハッタリで実存はしない。実は父島・母島の小笠原そのものが、日本から分離独立しようとしている。大和はただのカモフラージュに過ぎない――という考えである。この点に関し、小笠原村長に問い質したところ――
(小笠原村長談)
直吉爺さんから、妾島と有志近隣島が日本から分離独立すると打ち明けられた時、私どもは正直迷いました。じいさんにはもう何十年と世話になっておるし、彼の言わんとするところも理解しております。だがこのちっぽけな小笠原が果たして日本から分離独立なんぞできるかどうか。で、さんざん考えまして、住民投票致しましたところ、分離独立反対が大半を占めまして、結局直吉じいさんとは袂を分つことになったのです。とは言っても直吉じいさんとは古い付き合いでもありますし、彼の気持ちもわからんではない。「せめて彼の声が本土に届くぐらいは応援してもよいのではないか」という声も多く、村役場を大和への窓口にしたのです。残念ながら大和がどこにあるかは私達にもまったく知らされておらんのです。もちろん小笠原は日本の領土であり、私達は日本人であることを十分認識しておりますよ。お望みなら父島・母島全島を大和対策に御利用頂いて結構です。小笠原の財源のほとんどは日本政府からの交付金です。さらに産業の中心も公共事業。振興開発特別措置法や税制特例措置のお陰で、本土となんら変わらない生活も送れます。小笠原住民は本当に日本政府に感謝しております。
と日本政府に協力的で、とても大室直吉老人と結託し、分離独立を画策しているようには思えない。
ああでもない、こうでもない、ああするか、こうするか……。頭を痛める自民党首脳陣。そこへぶらっと現れたのが、東京都知事石原貫太郎であった。
「いやあ、皆さんお揃いですね。本日の自衛隊行軍は立派でしたなあ。私のやった三軍合同救助訓練なんぞ比べ物にならない。これで晴れて日本も世界の大国と認められてもよいでしょう」
「相変わらず嫌味なお人よ。少しその減らず口、何とかなりませんかな」
最中が苦りきって言う。石原都知事、お構いなしに続ける。
「爺さん一人に振り回されていますなあ。あるもないもわかりゃしない大和を探しに護衛艦八隻。ちょっと行き過ぎの感もありますが、なあに昨今までの体たらくを覆い隠すには、ちょうどいいデモンストレーションってところでしょう。で、もう大和は見つかったんですか。私のところへは一向に連絡頂けませんのでな。こうやって出向いた訳でして」
「見つかりゃあ、こんなに雁首揃えて渋い顔していませんよ。実はさっきまであんたの話をしていたところだ。小笠原は東京都の一部、あんたなら何とかするのではないか、とな」
「噂をすればなんとやら。でも本来なら大和の分離独立宣言が発表された段階で、都知事の私に御一言あるべきところ、こちらからお伺いしなければならんとは、道理無視も甚だしい。とは言うものの、私も政府の頭越しに事を運ぶことは毎度のことですから、お互い様ということで、特にへそを曲げたりはしませんがね」
「嫌味な物言いはやめてくれと言っているだろう」
「それでは本題に入りましょう。要は私に『直吉老人を説得し、分離独立派を全員投降させよ』、簡潔に言えばそういうことでしょう。」
「まさにその通り。さすがに石原都知事、洞察は鋭い」
「誉めてもらっているのか、嫌味と受け取っていいのか、理解に苦しみますな」
「そこまで悪く取るものでもない」
「でも無事爺さんを説得し分離独立派を投降させた暁には、石原の株が上がりますよ。皆さんにとっては芳しくないことでしょう。そんな事も憂慮した挙句、私への連絡が遅れた、いやなかったと考えることもできますなあ」
「君は協力する気があるのかね、それとも大和をそのまま放っておくつもりか」
「まあ小笠原は東京都の一部です。このまま独立してもらったら沽券にかかわる。一応あの爺さんを説得してみますがね。知らない仲でもない」
「なにい!あの老人と知り合いだと。そんなことは今初めて知ったぞ!」
最中、いやその場にいる全員が驚いた。ひょっとしたら石原も大室直吉老人と結託し、分離独立を画策している中心人物ではないかと訝しがった。ひょっとしたら東京都までが絡んでいるとしたら、これは分離独立だけで済まされず、日本国解体にまで通じてしまう。
「変な勘繰りはやめてもらいましょう。知り合いといっても百年の知己という訳じゃない。何年か前に小笠原の母島を訪れた時、紹介されたまでさ。おもしろい爺さんがいるってな。酒を汲み、天下国家を論じた間柄よ。たった一日だったが……。『ぜひ都の御意見番に』とお願いしたが、『お申し出誠に有り難く承るが、儂は既に隠遁の身、その旨謹んで御辞退申し上げる』と丁重に断られたよ。その爺さんがまさか独立宣言するとはなあ。実は正直、私も困惑しているんですよ」
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