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| Part3 日本政府、大和探索を開始する〜その4 (2005.9.3) |
その夜、小笠原村役場に対談の申し入れあり。大室直吉老人と石原貫太郎東京都知事のテレビ対談が行われる運びとなった。この対談は当然日本全国に生中継で放送されている。
「いやあ、久しぶりだなあ、直吉爺さん。また会えて嬉しいよ」
「おお、これは、これは、石原都知事。こちらこそ御無沙汰しておりました」
「いきなりの挨拶が、日本からの分離独立宣言とは、よくやってくれるじゃないか」
「それに関しては、あんたに謝らねばならん。本来ならあんたにまず打ち明けるのが筋じゃった。許してくれい」
「いや事が事だけに、打ち明けられなくてよかったよ。俺に打ち明けたら、まず作戦失敗だものな」
「そうよ。儂の作戦は極秘に進めねばいかんかった。いかに離れているとはいえ、ここは東京都の一部、とても都知事のあんたには相談できんかったわい」
「それにしても国家建設費が二千億ドルとはなあ。正直驚いたよ。何年も周到に準備していたんだろうな」
「おうよ。大掛かりだったぞい。いつ洩れるか、いつばれるか、特にここ数年は冷や冷やしどうしじゃった。まあ本土の方で問題があり過ぎて、小笠原が注目されることなんぞ、ほとんどなかったから、助かったわ」
「爺さんよ、あんたの決意はよくわかっているつもりだ。でもなあ、俺も日本国の人間だ。政治家として、そして同じ日本人として、爺さんらが独立するのは、黙って見ちゃおれんのだ」
「そうよのう。簡単に独立を許すようでは地方がどんどんそれに倣うわ。そうなれば日本はほんまに解体じゃ。国が滅びよるわ。勿論すんなり独立させてもらえるとは思うておらんよ」
「そういうことさ。今日の自衛隊行軍を見ただろう。政府の命令ひとつで彼らは全軍大和を攻撃するのだ。たとえ大和がどこにあろうと、間違いなく自衛隊は大和を一掃するだろうよ。それとも大和は自衛隊が手出しできないような場所、たとえば日本の領海近辺、排他的経済水域にでもあると言うのかい。それとも外国に庇護されているとか――」
「どっちもはずれじゃ。大和はあくまでも日本から分離独立をするのじゃ。外交問題に発展するような、たとえば尖閣諸島などに建国しようものなら、あっという間、中国に占領されてしまおうが……。外国の庇護は一切受け取らんよ。もっとも頼んだところで、どの国も応援してくれはせんわい。ところでのう、自衛隊は大和を一掃すると仰るが、果たして本当にそれができるのかのう?日本の馬鹿野党や平和主義者のお陰で、自衛隊は張子の虎となって久しいわい。自衛隊が大和に攻撃をしかけるか、ぜひ見てみたいものよ。今回の自衛隊行軍は大和に脅しをかけようというこっちゃろう。『たかが三千人程度の反乱分子、自衛隊の大出撃で、あっという間に降参するに決まっておる』作戦なんじゃろう。だがのう、絶対攻撃してこん軍隊とわかっていれば、怖いことなんぞ、これっぽっちもあるかい」
「おう、今の自衛隊はどうしようもないわな。爺さんの言うとおりだ。不審船などにしてもそうよ。北朝鮮の工作船とわかっていながら、向こうから攻撃してこない限り、一切こちらは手を出せんのだからな。最新鋭のジェット戦闘機を持っていても、日本上空を我が物顔で飛び回る、おんぼろ外国戦闘機を、打ち落とすことも追っ払うこともできんのよ。馬鹿な憲法とアホな平和主義者のおかげでな」
「わかるぞ、その気持ち。だからのう。そんな国はもうおっぽり出して分離独立じゃ」
「俺はねえ、東京からこの国を変えようとしているんだ。自衛隊の三軍合同救助訓練もその一環よ」
「それで国民のナショナリズムを誘い、憲法改正の空気を作り上げる訳じゃな。じゃが、果たして上手くいくかのう。いくら世論を煽っても、やはり最後はごり押しになるんと違うかい。そうなれば自衛隊が軍隊にほんのちょっと変わるだけで、日本の国体は何にも変わらんぞ」
「で、やっぱり分離独立かい」
「おうよ、分離独立よ。もう日本は何も変わらん。変わるには遅過ぎるわ。日本は『沈みゆく巨大船』じゃ。儂は日本と一緒に沈みとうはないでのう。お前さんのやっておるのはその『沈みゆく巨大船』にぺたぺた絆創膏を張っておるようなもんじゃ。儂はその『沈みゆく巨大船』から、沈むには惜しい宝物を回収するぞい。大和という小船でな」
「爺さん、『沈みゆく巨大船』を何とか浮上させてみようと思わないか?東京から日本大改革を俺と一緒にやってみる気はないか?」
「無駄よ、無駄。その可能性が一分でもあれば、分離独立なんぞせん」
ここで石原とうとう説得を諦めた様子。一息ついて言葉遣いのテンポが変わる。
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以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。
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