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| Part4 日本政府、大和と対話する。〜その9(2005.9.22) |
その様子を一部始終見ていた共産党本部の追志位勝男委員長。直吉老人との対談が決定した際に「今こそ全国に共産党の威信を示す瞬間」と大張り切りしたものであったが、土井たき子社民党代表の無残な姿を目の当たりに見て、すっかり自信がなくなった。自分はあの大室直吉老人と対等に渡り合えるだろうか、対等とは言わずとも一矢報いるだけの討論ができるのであろうか。いまさら対談を中止する訳にはいかない。ここで逃げれば党の威信にかかわる、さりとて討論であの老人に勝てるとは思えない。老人は社民党の非武装中立を徹底批判した。共産党の政策は非武装どころか最終目的は『自衛隊の解体』なのだ。社民党以上に批判されるのは明白……。と、葛藤・思案していたところ、そこへカメラクルーから無情なる一声、「それでは追志位委員長、お願いしまーす」
「大室先生、初めまして。共産党の追志位と申します」
えらく畏まった丁寧な物言い、威勢は感じられず覇気はなし。これでは蛇に睨まれたカエルではないか。
「共産党の諸君はよく頑張っておるのう。政治資金集めに不正を一切行わんのはあんたとこだけじゃもんなあ」
追志位勝男委員長は拍子抜けした。いきなり攻められるのかと思えば、誉められようとは……。
「恐縮です。共産党は『政治資金集めに一切不正を行わない』ことをモットーにしております」
「立派なもんじゃ。ところでその立派な政党に世間の支持がいまひとつ集まらんのはどういう訳かのう」
「国民はまだ誤解しているのです。共産党が政権を取れば、私企業を全部国有化、旧ソビエト連邦のような一党独裁社会主義国家になると考えているのです。革命精神をいまだに標榜している、あるいは内包していると思われているのです。御存知だと思いますが、既に共産党は何年も前より、弱者である中小企業そして労働者を支援し、貧困のない豊かな社会を作り上げ、真の民主主義を目指す平和政党に転換しております」
「おお、そうじゃったなあ……。ところで田中角兵衛をどう思うかね?」
直吉老人、いきなり故田中角兵衛元総理大臣の話題を持ち出した。
故田中角兵衛――日中国交正常化、「日本列島改造」などを手懸け、戦後最大の政治家と言われる。ロッキード事件にて受託収賄罪で起訴されるも上告中に死去。その娘田中真危子は現在自民党無派閥衆議院議員。
追志位委員長、何を訊かれているのか、飲み込めない様子。おそるおそる直吉老人に
「田中角兵衛とは故田中角兵衛元首相のことでしょうか?」
「そうじゃよ、その田中角兵衛のことじゃよ」
「田中角兵衛は、日本に金権政治をもたらし政財界を牛耳った巨悪、政治腐敗の元凶であると認識しておりますが……」
「その田中角兵衛はまさしく社会主義者であった。まだ戦後間もない頃じゃ。中小企業をないがしろにし、大企業ばかりを優遇する日本政府に対し、『中小企業こそ日本経済の母体、日本再建の基盤である』ちゅうて孤軍奮闘、とうとう国を上げて中小企業対策に取り組むことを約束させよった。それが今でも政策の根幹になっておるわなあ。さらに角兵衛は、公害や環境破壊、都市問題を全部解決する言うて『日本列島改造論』をぶち上げおった。まさしく現在の共産党が謳う党政策とまったく同じではないか。この事実をどう思う?」
「政治家の人格と功績はまったく別物であり、たとえ犯罪者といえども、その功績は認められるべきものであると認識しております。従って党の政策が、たまたま、政治腐敗の元凶である故田中角兵衛首相の理想理念と一致するところであっても、何ら問題はないと認識しております」
「政治は結果であると?」
「その通りでございます」
「であるなら、官房機密費の資料ごときで鬼の首を取ったごとく、偉そうにしてはいかんな。政策こそ政治の要であり、その無策・愚策ぶりを追及し、与党を糾弾することこそ、そして与党政策を凌駕する新対策を国民に提示し、それを国民に了承・納得させることこそ、あんたら野党の役目ではござらんか?スキャンダルだけで与党を終わらせることはできんぞ。政治は結果とさっきあんたは認めたのう。もし与党が国民の要求に答え、国民の納得する政策なり対策なり打ち出せば、スキャンダルのひとつやふたつ、彼奴らにとっては屁でもないぞ。儂の見るところ、あんたら共産党が政権担当党になれんのは、そしてもうひとつ国民に不人気なのは、政策なり公約なりが『頼りない』または『あまりに現実離れ』しておるからと違うか」
「……と申されますと?」
「たとえば三パーセント消費税の導入が決まったとき、共産党は消費税を廃止すると言いよった。五パーセントになったら、今度は三パーセントに下げると言う。ということは三パーセントなら認めるというこっちゃ。あの廃止案はどうなったんかいのう。あんたらのやっていることは消費者の味方面して与党に反対するだけのことと違うか。反対するのは結構、しかしその代替案をちゃんと用意してくれんとのう」
「時代が変われば、新たな対策を講じる必要があります。消費税は最終的に廃止の方向にもっていきますが、その第一段階として三パーセントに下げることを提唱しているんです。消費税を認めた訳ではありません」
「あんたら野党がましな代替案を用意せんから、国民は消費税必要已む無しと認めておるがな。そのうち七パーセントになったら、今度は五パーセントに下げる言うんじゃろ?」
「私が申し上げたいのは、時代に即して対策も公約も変わるということなんです。けっして……」
「泥縄というこっちゃ。いつも屁理屈こいて言訳する姿勢も、不人気な理由のひとつじゃのう」
「……(言葉に詰まる追志位委員長)」
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