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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part4 日本政府、大和と対話する。〜その10(2005.9.23)

「そうそう、儂はあんたらを非難するつもりはなかったんじゃ。どっちかと言えば応援したいぐらいでなあ。さっき儂は『スキャンダルだけで与党は終わらん』と言うたが、ちょいと訂正しておくわい。いくらなんでも限度はあるわなあ。ましな政治はしよらん、スキャンダルは次から次へ、ではのう。自民党は放っておいても潰れよる。他政党も同じことよ。仮にそうなったとして共産党が政権を担当すればどうなる。『真の民主主義』が成立した後には、社会主義国家引き続いて共産主義国家が誕生するんじゃろう。共産党網領にちゃんと謳うてあるがな」
「いや、あれはあくまでも理想理念であります。現在共産党は、悪徳政治家や官僚から国民を守り、すべての貧困を無くし、国民が平和を謳歌できる自由民主主義の日本を、党の全力を上げて創生していく所存でございます。革命政党などとは程遠い存在であります」
「ほう、そうか。それでは党の最終目標を聞かせてもらえんか?」
「国民生活と日本経済の豊かな繁栄を保障するためには、生産力を無駄なく効果的に活用する社会主義的計画経済が必要です。その推進にあたっては計画経済と市場経済の結合など弾力的で効率的な経済運営が必要とされます。さらに民族自決権の擁護、核兵器廃絶を中心とする世界平和への積極的貢献などを重視し、それらを堅持していかねばなりません。社会主義的計画経済により、これまでになく高い物質的繁栄と精神的開花、そして真の民主主義が保障されます。最終的には人間に対するあらゆる暴力は廃絶され、原則として一切強制のない、国家権力そのものが不必要になる、真に平等で自由な人間関係の社会が生まれます」
追志位委員長は喋るに従って、饒舌となった。党政策演説で何十回となく繰り返した網領の要約。追志位委員長はすっかり自信を取り戻したようだ。
「いや、恐れ入った。そこまで考えているとはのう」
追志位委員長は得意になった。さっきまで畏怖していた直吉老人に感心され、しかもそれを全国民が注目しているのだ。さらに直吉老人は続ける。
「大和と同じではないか」
「はっ?」一瞬ぽかんとする追志位委員長。
「大和が目指すところと同じだと言っておるのよ。真に平等で自由な人間関係の社会――それがまさしく大和の目指すところじゃて。まさに同胞よのう。その大和にまさかあんた方まで独立を認めん言う訳ではなかろうな?」
追志位委員長はどう反論したらいいかわからない。が、ここでそのまま直吉老人に丸め込まれるようであれば、共産党は面目丸潰れ。精一杯の抵抗を試みる追志位委員長であったが――
「大室先生、目指すところが同じであれば、私達と共に戦いませんか?日本を救うために立ち上がりませんか?共産党とともに理想の平和国家を作り上げませんか?」
「残念ながら、儂ひとりが協力したところで、今の共産党に日本を救えるような実力はあると思えんのう」
「先生がお望みであれば共産党の全指揮をお任せしても構いません」
「これは気前のいいことを言いよる。しかしあんたの独断で決めてもええんかい?儂に任せる言うんなら、儂はまず党政策を変更するぞ。自衛隊を解体ではなく軍隊にするぞ。さしずめ、好き放題なことを言いよる中国とは国交断絶、ぐだぐだ言うていつまでも人質を返さん北朝鮮を軍事力で威嚇するぞ。そしてアメリカとは軍事同盟破棄、日本にある全米軍基地にはお引取り願う。それでもええんかい?」
「そ、それは、話し合いにより……」
「話し合い、話し合い……か。話し合いですべてのことが解決するのであれば、中東和平はとっくに成立しておるわ。世界から一切の紛争・暴力がなくなっておるわ。あんたとこも結局『話し合い』、それでは社民党と何も変わらん……。それよりのう、いっそのこと革命を起こしたらどうじゃ。いま日本は揺れておる。日本政府、既成政党を全部ぶっ潰して、新しい政府をぶっ建てたらどうじゃ。共産党は民主労働党と名前を変えりゃあええわい。国民は応援するぞ。市民運動は真っ盛りよ。この機を逃せば共産党いや民主労働党が天下を取る日は未来永劫やってこんぞ!わかったか!」
最後の一言「わかったか!」だけは怒気を帯びているようで、あるいは檄を飛ばされたようでもあり、思わず追志位委員長も
「は、はい、党に持ち帰り検討致します」
「それがええ、それがええ。ひとつだけ言うておくぞ。これは儂からの助言よ。共産党いや民主労働党は他政党と行動をともにするな。あくまでも違う路線を歩め!よいか!」
「こっ、心得ました!」
直吉老人にかかっては共産党委員長も子供扱い。『ミイラ取りがミイラ』とはまさしくこのこと。この日を境に、共産党は他政党から一層白眼視されることになる。ただし一部の市民からは若干の好意を得て、ちょっぴり人気も回復した。

 官邸の政府首脳陣、特に最中はわなわな震えていた。今にも怒りで吹っ飛びそうな、爆発寸前の時限爆弾であった。
「俺の予感が的中したわい。悪い方へ、悪い方へことが進む。まったく土井も追志位も……なんだ、あのざまは!初めから俺は反対だったんだ。あの化け物と議論して勝てるはずあるもんか!」
「これからどう対策を講じますか、幹事長」と冷静を装う森田。
「各新聞社・放送局に今すぐ世論調査させよ。大和を容認しない国民の方が絶対多いはずだ。明日の朝刊には、大和分離独立反対の世論をぶち上げ、徴兵制のことも『軍国主義復活・アジアの脅威』と誇張して書くように言え。それともうひとつ、別な作戦もある」
最中の言う別な作戦とはこうであった――。公安警察を二百名小笠原に派遣する。マスコミを装い、村人から事情聴取。大和が全貌を発表する一日前に、なんとしても所在を突き止め、有無を言わさず殲滅する。最中の予感では「やはり小笠原の父島・母島は怪しい。人口が三千人の大和を大動員の自衛隊が探索しても見つからないのは絶対おかしい。大和住民の正体は父島・母島の住民ではないか」であった。「仮にそうだとすればプロモーションビデオに登場した顔ぶれがきっとその中に見つかるはず。子供から年寄りまですべてチェックし指名手配せよ。予想が外れたとしても大和発見の手懸りはきっとある」

以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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