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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part4 日本政府、大和と対話する。〜その11(2005.9.24)

翌日早朝、動員された公安警察二百名、腕にはマスコミをカモフラージュした腕章。小道具に小型録音機、メモ帳、カメラ。どうみてもマスコミ関係者であった。公安警察とはアメリカのCIAにも似た存在である。一般庶民には馴染みが薄い。

森田総理より訓示――
「諸君は、我々日本政府が誇る最優秀警察官である。日本の浮沈は諸君の双肩にかかっている。一刻も早く大和反乱軍本部を発見してほしい。手懸りだけでも構わない。とにかく急いでくれ。期間はたったの二日、期限は明後日正午まで。なお反乱分子が一掃され、分離独立問題が沈静化した暁には、諸君全員に勲一等が授与され、最功労者には将来警視総監への道も開かれている」
そこにいる公安警察官は身震いした。勲一等に警視総監。夢ではなかろうか。警察官として優秀だとされてはいても、所詮ノンキャリア。行きつくポジションは大方予想できるもの――。それがいきなり警視総監である。興奮しない方がおかしい。それぞれは自衛隊の用意したヘリコプター(勿論偽装済み)に分乗し、空路小笠原へ向かった。果たして明後日正午の直吉老人による全貌発表よりもいちはやく、大和を発見することは可能であろうか。日本政府は大和を殲滅することができるのであろうか。

 同日午前のこと――。官邸に集う政府首脳陣のもと、一人の訪問者が現れる。ドタドタドタ、ガタガタガタ。急に慌しくなるその周辺、ドアの向こうから、大きな女性のがなり声――。
「ちょっと、どいて頂戴!あなた、邪魔なんだから。スカートの裾、踏んづけないでよう!」
ドア越しに聞こえる、がなり声。まさしく現職自民党無派閥衆議院議員、田中真危子であった。
 ドアがバターンと開いて第一声――
「まあ、揃いも揃って、しょっぱい顔していらっしゃるわねえ、皆さん。あの爺さんにほとほと手を焼いていらっしゃるよう……。それとも私を辞職にでも追い込む算段かしら?」
「あなたの話題などこれっぽっちも出ていませんよ」と言うのは福田官房長官。
キッと官房長官を睨む田中真危子、
「あなたには訊いていませんよ!」
ともに元総理大臣の父親を持つ二人、親子二代に渡って仲が悪く、どうやらお互いに「奴は親の仇」と思っている節がある。
「ねえ、最中幹事長。私、あの爺さんと対談したいんですけど、宜しいかしら?」
「対談は結構。しかし日本政府の威信を損ねるような醜態を曝して頂く訳にはいきませんよ。あの大室直吉は化け物ですからねえ」
「土井と追志位の二の舞になるとお思いですか?土井なんて所詮ちょっと法律をかじっただけのブーたれ女、追志位は、ひょっとしてあれ政治家だったの?あの青臭い、小間使いみたいな奴」
「田中さん、ここは全員で対策を練りませんか?」と森田総理。
「あなたは黙ってて!ただのお飾りなんだから」
「総理に対して失礼でしょう。言葉を慎みなさい」と最中。
「あら、ごめんなさいねえ、森田総理。つい根が正直なもんで、ホ、ホ、ホ、ホ、ホ」
「秘書給与横領の件も正直に喋ってほしいものですねえ」皮肉を込めて、再び福田官房長官。
またまたキッと睨み返す田中真危子、さらに早口のがなり声で
「あなたには訊いていませんって、何回言えばわかるの!」
「まあまあ御両人、そう目くじら立てることもなかろう。とにかく問題はあの大室直吉だ。全容はわからぬといえども、あれさえ押さえれば、反乱軍は簡単に鎮圧できそうな気がする」再び最中が言う。
「私に考えがあるの。任して下さいません?」とは田中真危子。
「どんな作戦をお考えですか」
「昨日の対談を聞いてて思ったんだけど、あの爺、ひょっとしたら私の父をかなり尊敬しているんじゃないかなあって」
「その線はありますねえ」と森田。
「ねっ、あなたもそう思うでしょ。あなたも結構いいとこあるじゃない。見直したわ、総理大臣!」
「おっほん(真危子を遮って最中)、それでどんな作戦ですかなあ?」
「あの爺にねえ、『日本政府の顧問をやりませんか』って言うのよ」
「ほう、顧問ですか……」
「そう、顧問……。父の話を絡めてあいつの自尊心をくすぐってやるの。『何もかもあなたにお任せします』って。あの爺に逆らう奴、いると思う?土井は病院送り、追志位は弟子にされちゃったのよ。面と向かって喧嘩する奴なんて絶対いないわよ。流れでいけば国民も納得すると思うの。で、一旦あいつに何もかも押し付けちゃって、うまく山積みの難題片付けさせて、最後はおっぽり出してやるのよ。難題片付けられないんだったら、それこそ勝手に潰れちゃうわ。もう一度大和って叫んでも、ついていく馬鹿いないでしょう」
「おもしろい作戦ですねえ。でもそう簡単に日本政府顧問を引き受けてくれるとは思えませんが」とは森田。
キッと森田を睨み、表情が強張る田中真危子。が、すぐに相好を崩し
「駄目元よ、駄目元、ダ・メ・モ・ト。あの爺が顧問を断るんだったら、『やっぱり爺はただの海賊』って新聞に書かせばいいんだから」
「うーん、うまくいけばいいが……」と訝る最中。
「あんな爺に私が負ける訳ないでしょ!この中で私に勝てる方、いらっしゃる?」
勝つも負けるも、全員真危子を相手にしたくないだけなのだが――
「いいですね、最中幹事長?」と真危子。
「既に結構と申し上げたはず。しかしくれぐれも土井さんの二の舞にはならんようにな」
「任せて下さい。あんな爺に負けてたまるもんですか!」

以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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