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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part5 日本政府、多いにいらつく。〜その2(2005.9.30)

さらに一行、洞窟をぐんぐん進む。今度は急に生臭いにおい、そして何やら蠢く気配。さわさわさわ、キューキューキュー……
隊員D「何でしょうね、一体……」
隊員B「ねずみじゃないか?」
全員地面を照らすがそれらしきものは一匹もいない。
隊員C「おい、何だか上の方から音が聞こえないか?」
全員が懐中電灯を上に照らしたところ
隊員A「蝙蝠だ!すげえ!すげえ数がいるぞ!」
その大声で驚いたのか、あるいは懐中電灯に照れされ驚いたのか、一斉に蝙蝠がバタバタバタと羽ばたいた。何百匹いるだろうか。とにかく恐ろしい数のこうもりが一斉に飛び立ったのである。
 隊 長「全員、伏せろー!」
命じられるまでもなく全員伏せている。両手で頭を覆い、こうもりが飛び去るまでずっとうつ伏せの状態であった。その時間はたった一分もなかったはずであったが、その一行には二十分や三十分にも感じられた。そして、ようやく蝙蝠の羽音が止んだ頃合におそるおそる隊員Bが立ちあがる。
隊員B「蝙蝠は全部いなくなりました」
隊 長「我々が進む方向へ飛んでいったぞ。きっとこの先に出口があるのだ」
突如隊員Aの叫び声――
隊員A「あっ、宝箱だ!」
全隊員「えっ、宝箱?!」
蝙蝠に圧倒されて、さきほどまでは気付かなかったが、宝箱が彼らのすぐ近くに二十個ほど積まれている。いずれも全部が木製のちゃちな造り、小型スーツケースを分厚くしたような大きさ。そしてそこには再び立て札が――

「この洞窟を抜け出したければ、『リレミト』と呪文を唱えて下さい」
「紫のオーブ、ここに眠る」

隊員達は片っ端から宝箱を開け始めた。古い鉄兜や、棍棒、ひのきの棒、中には鎖帷子まであって、宝箱か古道具箱かはたまたゴミ箱かよくわからない。隊員Aは「リレミト!リレミト!リレミト!」と一生懸命叫んでいる。「バカなことは言っておらずにお前も手伝わんか!」と隊長に一喝され、ようやくリレミトと叫ぶのを止めた。隊員Bが、一番奥に転がっている最後の宝箱を開けたとき――
隊員B「あ、ありました。紫のオーブがありました」
それは光り輝くとはお世辞にも言えない、くすんだ紫色をしたオーブであった。大きさは野球のボールほど。神秘性はまったく感じられず、安物のガラス玉にも見える。
隊員B「隊長!オーブとは別にメモ書きした紙切れ一枚を発見しました!」
隊 長「見せろ!」

「よく紫のオーブを発見しましたね。祠はこのすぐ先にあります。毒蛇に気を付けて下さい。ところでまさかリレミトと叫んだ馬鹿はいないでしょうね。あれはただのジョークです」

さて隊長がそのメモ書きを読み終えると……。一向は急に顔を見合わせた。
全隊員「毒蛇だって……」
先を進もうとするが、足の出ない一行。祠はすぐ先だと言われても、毒蛇に気を付けよと付け加えられたら、足の竦まない者はいない。おそらくきつい冗談だとは思うが、それでも誰一人として先へ進もうとしないのである。
隊 長「お前、行け」
隊員A「私は、後方を守ります!」
隊 長「お前、どうだ?」
隊員B「私はまだ死にたくありません!」
隊 長「勲一等のチャンスだぞ」
隊員C「辞退致します!」
隊 長「警視総監になりたくないか?」
隊員D「隊長を差し置いてそんな……」
仕方なく先頭を歩く隊長。ゆっくりじっくり足元を懐中電灯で照らし歩を進める。
隊 長「慌てるなよう、ゆっくり、ゆっくりとな。声を殺せ。何にも刺激するな」
先を進む隊長、後続する隊員達、いずれも皆冷や汗たらたらである。無駄口を利くものはいない。ようやく数メートル先の岩場からこぼれる日の光を発見。そしてそこに祠らしきものを確認した隊長。
隊 長「おい、あそこに祠のようなものがあるぞ」
隊員達「えっ、本当ですか?!」
ようやく毒蛇の恐怖から開放されるのかと思った隊員達、祠が見えたその瞬間、誰彼となく「やったぞ!」とガッチリ堅い握手をした。
と気を緩めたその瞬間、先を進む隊長の膝あたりに行く手を遮る青い紐。「何だ、これは?」とその紐を引っ張った瞬間に、天井からバラバラバラと十数匹の蛇が降ってきた。
「ギャー、毒蛇だあ!」
驚き慌て狼狽する隊員達、右往左往、まだ来るか、まだ追うか、と叫びながらあっちこっち逃げ回る。慌ててドタっと転んだ隊員も。さすがに隊長だけは「取り乱すな!大人しくしておれば噛み付いたりせん!」と指揮だけはちゃんと取ろうとしていたが、狼狽の色は隠せない。そのうち正気を取り戻した隊員達。まったく動こうとしない蛇をおそるおそる触ってみると「何だ、これ、おもちゃじゃないか!」
 隊長以下隊員達すっかり疲れ果て、その場にへなへなと座り込んだ。しばらくして「おそらくあれが祠だろう」のそりのそり歩き出す。
隊員D「隊長、祠の入り口に何か、書いてあります!」
隊 長「読んでみろ!」

「別世界の入り口にようこそ。『アバカム』と呪文を唱えて下さい。祠の扉が開かれ、諸君は別世界に導かれるでしょう」

突然隊員Aが「アバカム!アバカム!アバカム!」、隊長が遮って「馬鹿、そんなこと言ってる場合か!」、隊員Dが「隊長、もう一文、何か書いてあります!」

「呪文が効かぬ場合、紫のオーブを祠の入り口、左の台座にある穴に放りこんでください」

隊員C「穴を見つけました。オーブの入りそうな穴が開いています!」
隊 長「オーブを入れてみろ!」
さて、オーブを入れた途端、ガチャンと音がして台座の下から、紙切れの入った透明のプラスチックカプセルがころんと落ちてきた。その紙切れには――

「おめでとう。数々の苦難を潜り抜け、無事別世界の入り口に到着した、諸君の勇気を深く褒め称えます。別世界の入り口は、祠の裏側です。ところでまさかアバカムと叫んだ馬鹿はいないでしょうね。あれはただのジョークです」

隊員D「あ、ありました。別世界の入り口がありました」
蹴倒せば簡単に開けられるような粗末の木製の扉がそこにあった。そしてその扉をどきどきしながら開けてみると、そこは太平洋を見下ろす、大パノラマの絶景であった。
隊員B「隊長、ここが別世界の入り口なんでしょうか?」
隊員C「私には、ただ洞窟をつき抜け、反対側に出たようにしか思えないのですが」
隊 長「いや、大和への逃走経路とも考えられる。この辺を隈なく探索してみよう」
すると、下手の方から、散歩でもしているような、島民の初老男とばったり遭遇。
「あんた達、マスコミの人達だねえ。どうした、そんなドロドロになりおって……?」
「いやあ、折角来たんだから大和の問題だけ追うのではなく、小笠原の景色も堪能しようということになりまして。で、散策していたところ、全員そこの岩場で滑って転んだんですよ。災難でした、まったく……」
適当に誤魔化す隊員達。島民は続けて――
「気を付けなされよ。この辺は慣れないと危ないからなあ。それとなあ、そこに洞窟への扉があるけど、入ってはいかんよ。向こうには抜けられんようになっているからなあ。昔は観光名物にいろいろ趣向を凝らしたもんだったが、すっかり錆びれてしもうて、おまけに悪ガキが悪戯するんで、今は近寄る者もおらんわ。それともうひとつ、小学校の側に住んでいる爺さんの言うことは聞いちゃいかんよ。あの爺さんすっかりボケとるよってなあ、おまけに悪ガキどもが『洞窟には別世界の入り口がある』なんて吹き込むもんじゃから、爺さん、それしか言いよらんのよ」
「……」

 そんなこんなで、まったく手懸りの掴めぬ公安警察官達、夕闇が迫り、日が暮れてきた。本土からは「まだ大和は見つからないか!」と再三の確認、いくら急かされても「無いものは無い」

以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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