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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part5 日本政府、多いにいらつく。〜その4(2005.10.4)

最中のお願いとは――
「現在、海上自衛隊艦隊および陸上自衛隊輸送艦隊は小笠原父島および母島付近十キロあたりに待機、航空自衛隊飛行連隊は硫黄島自衛隊基地にて待機しています。私の命令一つで即時始動、もし大和が小笠原にあるとすれば、小一時間もしないうち、全軍その地点へ急行、迎撃態勢に入ることが可能です。おそらく大室はそこまで予測しているでしょう。そして大室の狙いはここです。彼奴の言葉を信じるとすれば『軍隊は持っていない』ことになっている。とすれば大和に住んでいるのは民間人だけだ。相手は武器を持たない民間人、仮に自衛隊軍が攻撃すれば日本中いや世界中から日本政府が非難されること明白、よって自衛隊はあくまでも威嚇だけ。結局話し合いでしか大和問題を解決できないことになる。そうなれば向こうの思う壺。討論してあの大室に勝てる者はいない。おたきさん、追志位さん、そして真危子とことごとく討死。はっきり言って駄目を押されましたよ。ではどうすればいいか。結論はたったひとつ、大和の所在地がわかったところで一斉に自衛隊全隊が上陸、一切の話し合いに応じず、住民をすべて捕獲逮捕する。万一銃器にて反抗せし者がおれば攻撃も已む無し。ちゃんとその模様もテレビカメラにて収録する。大和には極右テロリスト集団と汚名を被せ、大室直吉は見つけ次第射殺する――」
 さらに続ける最中――
「そこで皆さんには次のことに協力してほしいのです。明日午前より緊急臨時国会を召集します。そして『自衛隊による大和完全殲滅の軍事行動決議を全国会議員ほぼ満場一致の上で採択』する。皆さんには滞りなく会議が進むよう、それぞれの政党を指導してもらいたい。ただしあくまでも大和反乱軍を一掃するという名目でな。間違っても大室射殺の件は伏せておいて下さいよ。総攻撃は明日の午後、大和の所在地がわかり次第、自衛隊全軍を上陸させます。そうやって大和を一掃する。いやこの日本から抹殺します……。それとは別に皆さんにお伝えしたい朗報がある。我らは与野党立場が違えど、密室会議にて国策を決定するとは、既に同胞といってもよかろう。もし皆さんの御協力で大和を一掃できた場合、野党からも数人、大臣のポストが得られるよう、新しい内閣制度を作り上げる」
 一同、じっと考え込んでいる様子。最中が続けて――
「私の言いたいことはそれだけです。もし反対の方がいらっしゃれば、遠慮無く仰って頂きたい。ただしこれだけは断言しておく。大和の独立を万一許せば、ここにいる全員は終わりだ。我々が作り上げた日本も本当に終わる」

 最中の提案にあっさり頷いてよいものか、他政党の動向を窺いながら、実は答えはもう出ているにもかかわらず、検討のふりをする政党代表者達――。そこへ急遽その白々しい雰囲気を払拭するかのように、伝令の官邸職員が飛び込んできた。福田官房長官のもとへ一目散に駆け寄る――
「また、非常事態か!」そこにいる全員がそう思ったに違いない。福田官房長官、みんなの不安を推し量るよう、ひどく畏まりながら――(以下は最中、福田とのやり取り)
「大室直吉より連絡がありました。官邸にお集まりの皆さんと『今すぐに対談したい』とのことです」
「今すぐだと?」
「そうです。『当方は既に準備済み。そちらさん次第』と申しております」
「この一件、マスコミには流れておるのか?」
「いえ、今回はあくまで『日本政府と大室だけの極秘対談としたい』との意向です」
「全国放送のテレビ対談は一切断る。インターネット中継も勿論お断りだ。その条件でよければ対談を承諾してもよいが……」
「『この対談は互いにとってプラスになる。むしろ取引といってよい』とも付け加えております」
「取引?互いにプラス?一体何のことだ?」
 最中のみならず全員が、あれやこれや思い巡らし『取引』の中身を推測し始めた。いままでいけいけで大和分離独立を主張してきた大室、日本政府を徹底的に批判し、ことごとく著名政治家を葬ってきた大室、さんざん勿体つけ国民には期待させいよいよ明日全容発表すると言うのに、その前日に『取引』とは?しかも極秘会談とは?裏取引・密談――それは日本政府が得意とするところであり、大和分離独立はその否定から始まったのではないか。もし裏取引・密談の事実が公になれば、イメージダウンするのは大和の方であり、むしろ日本政府にとっては好都合……。で、あるのに「なぜ、それを?」
「わかった!」そう叫んだのは森田総理である。
「きっと大和には国民に知られたくない弱みがあるんだ。だから極秘対談を要求してきたんだ!皆さん、どう思いますか?」
ふむふむと頷く面々、そう言われるとそう思えないこともない節がある。だいたい今までがあの大室、強気過ぎた。強気強気で突っ張る場合、得てして劣勢であることが多い。我々そして国民は、まだ見ぬ大和をほんの一部垣間見せられただけで、新たな脅威と感じ、勝手な幻想を思い抱いているだけではないか。
「強力な新独立理想国家が誕生する」――多くの国民は勝手にそう解釈しているに過ぎない。いやそれこそが大和いや大室の狙いだったのではないか。本当は分離独立する実力なんてこれっぽっちもないのに、それを誤魔化すために、敢えて大和の所在地を教えることなく、国民に期待するだけ期待させて、独立容認の世論を無理矢理作り上げようとしていたのではないか。そう考えると、我々や国民を欺くために、マスコミを最大限利用、テレビ対談やインターネットを駆使して、大和を大仰に宣伝してきたことも納得がいく。
「その弱みとは一体何だろうな?」
「それは大室と話してみないことにはわかりません」
「よし、それでは大室に極秘対談了解したと伝えよ。今から三十分後に会談を開始する。念のため小津武(元内閣法制局長)も呼んでおけ。それと向こうは極秘対談を望んでいるようだが、いざという時のため、対談の模様は全部収録しろ。ちょっとでも弱みを見せようものなら、後日国民に大公開してやる」

以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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