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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part5 日本政府、多いにいらつく。〜その5(2005.10.5)

 そして三十分後、官邸閣議室にはこちらの様子を大室直吉老人に伝えるテレビカメラと、大和暫定基地本部の大室直吉老人を映しだす大型テレビが設置された。閣議室には最中以下の計十一名が、「隙有れば一太刀浴びせん」ごとく殺気を帯びて、大室を待ち構えている。

「これは、これは、お歴々の皆さん、お集まりですなあ。ざっと見渡すところ、そちらにいらっしゃるのは、日本を代表する政治家の面々。自民からは森田総理、最中幹事長、福田官房長官、山崎政調会長、青木総務会長。そして他政党からは鳩屋由紀夫民主党代表、扇十景保守党代表、小沢剛一朗自由党代表、神主他家法公明党代表、桑鉄造共産党前委員長と……、そしてエリート中のエリート小津武元内閣法制局長まで。さしずめ日本政府のオールスターと言ってよい。皆さんお揃いで大和抹殺作戦を計画されておったと察するが、もう作戦完了しましたかのう、それともこの大室を暗殺する算段でもしていなさったか、ほっ、ほっ、ほっ。これだけ優秀な方々を前にしては、儂といえどもちと臆するわい。ところでどなたとお話しすれば宜しいのでしょうかなあ」
「臆するとは御冗談を。大物政治家二名を病院送りにしておきよく仰る。こちらは、今日は誰が病院に運ばれるかと、さきほどから戦々恐々としていたところ……、『大室先生とは議論したくありません』とな」
「やはり黒幕おっと代表は最中幹事長じゃったか。儂とて議論なんぞしたくもない。正直なことを言うたまでの話。人間、痛い所・真実を突かれると、逆上するもんじゃ。土井さんと真危子さんには気の毒なことをした。こっちの本意ではありませんわい」
「済んだ事はもういいでしょう。誰も責めようとは思っていませんよ。さて早速だが大室先生、『極秘会談にて取引』とのお申し出、残念ながら私ども日本政府は、一切取引に応じるつもりはありませんよ。大和を容認する代わりに、大和から技術援助・資金援助を申し出られても迷惑です。日本の技術力は世界一、債務超過に陥ってはいるが個人資産は千四百兆円を超える」
「その技術力、昨今は諸外国にどんどん追いつかれ、かつての技術大国日本は幻想であったと世界中から指摘され久しい。じゃが儂は、大和を除けば、日本の技術力は世界一と認めておるよ。ただしその技術力も経済が滅茶苦茶では、将来どうなることやらわからんがのう……。勘違いされぬよう言うておくが、儂の望む取引は最中さんが仰ったようなことではない」
「たとえどんな理由があるにせよ、絶対に取引には応じません。仮に大和を容認すれば、日本中で独立騒ぎが起こる。暴動やテロに発展するかもしれん。日本全土でクーデター騒ぎが起こればどうなる?そうなれば死人も出よう。それらを鎮圧するために自衛隊も出動する。日本は火の海になる。だから大和はいかなる理由があろうとも独立させてはならんのだ。大室先生は日本がそうなることをお望みですか?」
「そう、そこなんよ、儂が思い悩むのは……。最中さんが仰った通りじゃ。大和が独立すれば日本中間違いなく、独立騒ぎが起こりよる。空前のクーデターラッシュじゃなあ。何千何万の日本人が死によるじゃろうなあ。天安門を遥かに凌駕する世界的大事件じゃて。そこまで多くの日本人を犠牲にして大和が独立すれば、儂も後味悪いわい。かと言って今更大和の独立は止められん。もうスイッチは押されたよってな」
「大室先生の力をもってすれば独立を中止するのはたやすい事でしょう」
「いや、もう無理じゃ。既に『サイは投げられた』。堰きが切れた激流はもう止まらんわい。もし止めてみい、大和は暴発するぞ。いや日本中が暴発するぞ。大和に幻想を抱く連中が大暴発するぞ。大和の激流が日本を飲み込むんじゃ!大和の三千人を抹殺したとしても同じ事じゃ、もうこの流れは止まらん。力ずくで止めるかい?自衛隊軍で何百万人の日本人を押さえるかい?そうなれば昔に逆戻りよ、戦前の帝国時代になあ。いやもっと恐ろしいわなあ、旧ソビエト連邦の大粛清、中国の文革を遥かに超越した大虐殺が始まるわい」
「大室先生、そこまで御理解していらっしゃるのでしたら、なぜ大和分離独立を宣言なされたのですか?先生こそ人殺しの張本人ではありませんか?」
「そうかもしれん……。しかし命より大事なものもある。それは人間の尊厳じゃ。日本人なら日本人としての生き様よ。あんたらほんまに『今のままで日本はええ』と思うておるのかえ?土足で人の家に上がる連中に、平気で人のものをかっぱらう連中に、口先だけでしか抗議できん。中国やアメリカのええようにされておる。あんたらほんまにそれでええと思うておるのかい?」
「要件を仰って下さい。大室先生の御講釈を聞くために対談を承知した訳ではありません」
「おっと済まなんだ。今日は取引しに来たんじゃった。その取引とはなあ、こういうことよ。あんたらがどんな計画立てよるかしらんが、大和は間違いなく独立する。当然独立戦争は起こるじゃろう、あんたらも黙って認める訳にはいかんしのう。そうすると殺し合いじゃ。さっき言うたようにな。しかし儂としては大和の連中も日本人も一人として死んでほしゅうはない……。そこで取引よ。いや助言と思うて聞いておくれよ」

以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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