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| Part6 大和、全容発表する。政府、全面攻撃する。〜その4(2005.10.13) |
ここまで大室直吉老人が喋ったとき、突如海手の方から大音響の轟音が響き渡った。自衛隊の威嚇弾である。轟音は連続して数発、もうこれ以上大室に喋らせておくことはできぬ。既に国民は八割いや九割以上大和に傾倒しているに違いない。これ以上大和を、そして大室を生かしておくことはできぬ。即時粉砕。それが最中の結論であった。
「全自衛隊は硫黄島に上陸せよ。全力を上げて大和全住民を捕獲・逮捕せよ。抵抗するものは容赦するな。武器を用いて反抗するものは射殺してよい。基地のみならずすべての建造物を破壊せよ。研究所は後回しで構わん。そして大村直吉は発見次第射殺せよ!」
自衛隊は続々上陸を始めた。全員が上陸し攻撃態勢が整えられた後、最中の命令により一斉攻撃が開始される。戦車や装甲車なども降ろされ、飛行機連隊も発進準備完了している。もはや有無を言わさず攻撃する。敵に何らかの目算はあるだろうが、これ以上様子を窺っている訳にはいかない。大室は自衛隊の攻撃を目前にして話し合いを目論むだろうが、一切の応対を拒否する。ここまで最中は腹を決めている。
「とうとう始めよったなあ、愚かなる日本政府の諸君よ。さあ、返事はせんでもいいから、ここにいる大和住民達の顔をよく御覧なさい。カメラさんよ、ちょっと彼らをクローズアップしてもらえんか?そう、特に老人を中心になあ。この方々、最中さんなら御存知ではないかい?」
官邸の一室、政府首脳陣が全員怪訝な顔をしている。
「誰でしょうね、あの人達は?」とまず森田総理。
「ただの爺さん婆さんにしか思えませんが」と福田官房長官。
「特に著名な方々でもありませんなあ」これは山崎政調会長。
「も、もしやあの方々は……!」声が引き攣る青木総務会長。
「ひょっとしたら、遺族会の方々か!?」そう叫んだのは最中幹事長であった。
硫黄島『大和』の大室直吉老人、
「そろそろ気付かれたか?そう彼らは戦没者遺族会の方々じゃわい」
カメラは老人達をひととおり追った後、また大室直吉老人を映した。
「この方々はなあ、遺族年金を欲しいが為に、戦後保障をもっと要求する為に、日本政府にいちゃもん付けておる訳ではないぞ。この方々の望みがわかるかあんたらに……」
直吉老人が話す間にも慌しくしかし確実にそして無情に自衛隊は攻撃準備を整えている。彼らに直吉老人の声は聞こえない。
「第一の望みはなあ、あんたらいや日本人すべての望みと同じじゃ。日本が二度と戦争することのないように、そしてふたたびあの惨禍を繰り返すことのないようにじゃ。これはどんな鈍感でもわかるこっちゃ。そして第二の望み、これがあんたら日本政府の連中いやアホの国民どもがまったく理解しておらんこっちゃ。それはなあ……、この人達の死んでいった御家族の思いがちょっとでも報われることじゃ。その思いとは何ぞや?死んでいった御家族の思いとは何ぞや?」
怒りモードの直吉老人、さらに饒舌となる。
「彼らはなあ、妻を守り、子を守り、父母を守り、平和で美しい日本を守り、慎ましくも誇り高き日本精神を守るため、つまり日本人としての尊厳、人間の尊厳を守るために死んでいったんじゃ。わかるかあんたらに!誰も天皇陛下の為に死んでいったのではないわい!そんな必死の思いも報われず日本は本当に駄目な国になってしもうた。日本全国、政治家・官僚から一般庶民に至るまで、我利我利亡者の大跋扈。破廉恥漢が罷り通る狂人の国、平気で国を売る国賊までも出現する始末。日本精神を忘れた日本人は、歌を忘れたカナリヤどころではない、『羅生門』に登場する追剥、『七人の侍』に登場する盗賊連中と何ら変わらんわい。そんな日本にしたのは誰じゃ!」
さらに大室直吉は
「この御遺族はのう、『外国が気になって政治活動が滞るようでは気の毒じゃ。別に靖国へ参拝して頂かんでもええ。心でさえ冥福を祈ってくれればそれでええ。死んでいった人々の思いを汲み、日本を『誰もが愛し誰もが誇れる素晴らしい国』にしてもらえれば、それでええ』言うておるぞ。それを票集め・票欲しさのため、形だけは靖国参拝……。そうなれば遺族の方々も依怙地になるわい、『何としても終戦記念日に参拝せよ』とな。『政治家として国民の一人として参拝したい気持ちはある。しかしどうしても立場上そうできん。頼むから諒承してくれ』と心から訴え、故人の冥福を祈るなら、遺族もわかってくれようもの。そんなこともせず、あっちの顔色覗い、こっちの顔色覗い、遺族でのうても腹立つわい!さあ、日本政府の方々よ、それでもこの人達を抹殺するか!?反乱分子として一掃するか!?」
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以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。
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