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| Part6 大和、全容発表する。政府、全面攻撃する。〜その5(2005.10.14) |
官邸の政府首脳陣、特に最中は困った。さあ、どうする?さあ、どうでる?
「話し合いでいきますか、最中幹事長?」森田が問う。さすがの最中も参った。「うーん……」唸る最中、重苦しい空気が官邸の一室を支配する。青木、山崎、福田らの面々はすべて最中次第、彼の判断を仰ぐのみ。
「よし!決めた!作戦を遂行する。全自衛隊に命じ、大和を殲滅せよ。責任は一切俺が取る。あの遺族の関係者は憤るかもしれんが、それは何としても俺が押さえる。大和をこの日本から抹殺しなければ、確実に今の日本政府は滅びる。俺達も終わりだ。作戦を速やかに実行する!」
とうとう作戦は開始された。大室直吉老人の叫びも、大和住民(戦没者遺族会の人々)の願いも、日本政府には遂に届かなかった。既に上陸を完了、攻撃態勢も十分に整った自衛隊全軍、大和本部に向け大進軍を開始した。装甲車、戦車を中心に完全装備の歩兵大連隊、上空は数十機の飛行連隊が航空自衛隊の威信を示すかのようなアクロバット威嚇飛行。
にもかかわらず、大和住人達、一切逃げ惑うことなく、その場を梃でも動かぬと決めている様子。潔く逮捕・捕獲されるつもりか、はたまた決死の討死覚悟か?
「ほう、こちらへ向かい進軍してくる様子から察するに、日本政府はついに我が大和殲滅の決心をしたようじゃのう。戦没者遺族の方々に御登場願い、彼らの思いを日本政府諸君の良心に訴えることで、その愚挙を思い留まらせようとした儂の作戦も失敗に終わったようじゃ。これでは太平洋戦争突入の軍部と一緒、愚かよのう……」
官邸の最中――
「一切の妥協を許すな!もうあの老人の言には耳を貸さん!一刻も早く大和住人を逮捕・捕獲せよ!手段を選ばずあの老人を抹殺せよ!大和を殲滅せよ!」
ところが全員上陸したはずなのに、一隻の輸送艦だけが小笠原父島・母島方面に引き返してくるではないか?まるで戦場から逃亡するように、一隻だけとぼとぼ引き返してくるのである。
「何をしているのか!あの輸送艦は!敵前逃亡は死刑だぞ!」
「最中幹事長、自衛隊は建前上軍隊ではないので軍法会議は開けません。従って敵前逃亡しても死刑にはなりません!」
「そんなことは、わかっておるわい!しかし我ら自衛隊にあそこまで弱虫の連中がいるとは……」
自衛隊全軍は大和全住人が集まる大和暫定政府基地前の青空広場に到達せんとしていた。テレビカメラは、一部始終細大漏らさずその模様を、日本全国いや世界中に生中継している。
そしついに一番隊が青空広場に到着。一番隊と大和住民の間には、もう十メートルと距離はない。、大室直吉老人は住民の間を掻き分け掻き分け、彼らの矢面となり、敢然とその連隊の前に立ちはだかった。
対峙する直吉老人と完全装備の自衛隊員達。しばらく睨み合いが続く。あまりにも無防備な直吉老人に対して、自衛隊員達は銃口を向けることさえ躊躇しているよう。射殺命令が出たからといって、目の前のまったく無防備な老人を殺す事ができようか、しかも日本全国ならず世界中でその映像が流れているというのに。
「何をしておる!さっさと殺らんか!」テレビの前で、苛立つ最中。
しばらくして、直吉老人、連隊長と思われる自衛隊員までつかつか歩み寄ると……
「すわ大室射殺されるか!」とすべての視聴者が思ったその瞬間!――
二人はがっちり握手したのである――
テレビの前の全視聴者、まったく訳がわからない。ついさっきまで戦後最大の反乱軍一掃作戦が生中継で放送されようとしていたのに、今度はいきなり、反乱軍の首領と殲滅軍の隊長が握手するとはどういうことだ。
それは最中達もまったく予期せぬ出来事だった。理解を超えていた。そこへ引き返してきた輸送船より連絡が入り、最中達は戦慄の事実を知ることになる。その連絡とは――
(輸送船より)
引き返した輸送船に乗員している自衛隊員は約五百名、残り約三千名の自衛隊員は全部脱走し、大和に合流した。どうも予め計画済みのような感じだった。我々も大和に合流するよう説得されたが、脱走はよしとせず袂をわかった。武器は全部大和に没収された。我々は丸腰、五百人ではどうにもならぬ。
大和住民達と自衛隊合流軍による、和気藹々とした挨拶、朗らかな語り合いの映像が日本全国、世界中に生中継された。あるものは再会の喜びを語り、あるものは初めて会う同胞に自己紹介。そしてこの大芝居の仕掛け人、日本政府にとっては史上最悪の犯罪者大室直吉老人がふたたび――
「日本政府の諸君、この分離独立騒動、第一戦は儂ら大和の勝ちだったようじゃのう。最後の最後までこんな作戦は取りとうはなかった。あんたらの良心に賭けてみたんじゃが、それも適わんかったわい。四隻のイージス艦ほかすべての装備はありがたく頂戴する。卑怯と言うなかれ!これはクーデターじゃぞ。ぼけーとしておるあんたらが悪いんじゃ。そうそう一隻だけ名前のない船があったのう。『ヤマト』と命名しようかい。『戦艦ヤマト』の誕生よ。さあ儂ら大和は三千人の軍隊を手に入れた。日本の自衛隊は二十四万人。三千対二十四万じゃ、桶狭間なんか目じゃないのう。大和を攻撃してくるかえ?あんたらに大和を攻撃する度胸があるかえ?日本国民よ、移住希望者よ、これで国家としての形態はすべて整った。ここから大和は第二の独立作戦を開始するぞ。今度からは堂々とな。移住希望者および事業参入希望者・事業参入希望企業はまず大和友好団体へ必要書類を送ってくれ。必要書類の詳細、書類送付先の友好団体は今晩にでもインターネットを通じて発表する。応募期限は二カ月後の○月×日、明日より書類到着順に、随時厳正なる書類審査を行い、面接を実施、二カ月後には早速移住を始めるぞい。事業参入も可能じゃ。なお日本政府の妨害により個人の移住および事業参入が不可能となった場合、この国家建設は諸外国の力を借りて行うことになる。二十兆円の大事業はすべて外国の手に渡る。十万人の大和国民もすべて外国人となる。なあに、顔形が違えど日本精神を理解する外国人は、今の日本人よりよっぽど多いと言えよう。たとえ日本人が参加せずとも、大和建国には何の支障もないわい。ちなみに国家建設の費用はすべてここにいる戦没者遺族会の御家族、そして日本全国に散らばっている戦没者遺族の方々、そして儂の大和建国理念に共鳴してくれる有志など、およそ百万人が二十年以上も前から毎年ちょっとずつ儂に預けてくれた金じゃ。けっして無駄にはせんぞ、儂は……。明日以降が楽しみじゃ。それでは日本全国の皆さん、御機嫌好う。間抜けな日本政府諸君、諸君らの良心をやはり儂は期待しておるぞ」
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以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。
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