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| Part7 『一部の良心ネットワーク』、立ちあがる。〜その7(2005.10.22) |
さてその日の午後、自衛隊の特別仕様高速艇に乗って一人の中年政治家が、東京湾をただひたすら小笠原方面に向かって、猛烈なスピードで航行していた。小笠原はすでに全地域厳戒態勢にあり、個人が自由に行き来することはできなかったが、得意の恫喝で自衛隊員を脅し、日本政府に謀反を起こした敵陣へ、単身乗り込む勇気ある政治家は、まさしく鈴木スネオ外務大臣であった。
鈴木スネオ外相は父島に到着すると小笠原村長に面会を申し込んだ。島民も鈴木スネオの顔を知らない者はいないので、ほとんど待つことなく村役場へ案内され村長と対面した。
「いやあ、鈴木先生。よくこんな危ない中、小笠原へいらっしゃいましたなあ。大和の連中に見つかったら、領海侵犯言うて殺されるかもしれんからなあ」
「国家に忠誠を尽くし、命を捧げるのは政治家としての使命、たとえ殺される可能性があろうとも、我が鋼鉄の意志はびくともしません」
「御立派ですなあ。先生のような方がもっといれば大和の連中も独立する事はなかったろうに……。日本もここまで混乱しなかったろうに……。ところで先生、この父島にはどんな御用で」
「実はこの一件、日本政府には内密です。私の独断でやって来たのです。政府の首脳陣は、大和とくに大室直吉老人を恐れるばかりで、話し合いもできない腑抜けばかりです。不肖鈴木は、命を賭して大室直吉老人と直談判すべく、小笠原へやってきた次第です。小笠原村長は大室老人と旧知の間柄、ぜひ直接対談できるよう、お口添えして頂きたい」
「いや誠に御立派、今すぐに連絡しましょう。きっとお会いできるはずです」
「それと、もうひとつ。この件はすべての問題が解決するまで極秘にしてほしいのです。私がここに来たことも、大室老人と対談したことも。できれば村長のお口添えで、大室老人にもその事を伝えてもらえないだろうか?」
「お安い御用です。対談がうまくいけば宜しいですなあ」
村長は、役場の奥に消えたと思ったら、五分も経たないうちに戻ってきて
「直吉爺さんは『極秘会談の件承知した』と仰っております。『大和暫定政府基地より迎えのヘリコプターを派遣するのでしばらくお待ちを』とのことです。」
「村長、感謝しますぞ。この件がうまくいけば、小笠原にも何らかのお礼をさせて頂きます。その際は遠慮されずに」
「その謙虚な態度、世間の風評とはいい加減なものですなあ」
小一時間も待たずに到着した迎えのヘリコプター、鈴木外相を乗せて、いざ大和暫定政府基地へ出発。いよいよ大和代表大室直吉と日本政府代表(自称)鈴木スネオの極秘対談が始まった。場所は大和暫定政府基地内の応接室。部屋には大室老人と鈴木スネオのふたりだけ。紛れも無く『差しの勝負』である。時刻は夜九時を回ったところ――
「いやあ、よう来なさったなあ。大和へお越し頂いた外国人第一号となられましたなあ。しかも現役の日本政府外務大臣。大和にとっては要人です。まだ日本国は大和を容認してくれんようじゃが、とにかく嬉しいわい」
「大室先生の御活躍、御高説、不肖この鈴木、常々感服しておるのでございます。ぜひとも日本政府顧問就任を懇願する一人でおりましたが、日本政府首脳陣、先生の仰らんことを熟慮することもせず、愚かなる対応ばかり繰り返し、ついにはとんだ醜態をさらす始末。日本国外務大臣鈴木スネオ、日本政府を代表し陳謝致します」
「これは、わざわざ。それでは『日本政府は大和容認の意向あり』ということじゃな。それであんたはその根回しにお出でなさったかい?」
「いや、正式に決まった訳ではありませんが……」
「では、非公式に決まった訳じゃな?」
「いや、非公式に決まった訳でも……」
「それでは何にも決まっておらんではないか」
「いや、しばらく……、とにかく私の話を聞いて頂けませんか?大室先生にとっても、大和住人にとっても、我が日本国にとっても、世界にさえ貢献する、非常に有意義で発展的な話です」
「ほう、そんな素晴らしい、都合のええ話があるんかいな」
「はい、おそらく大室先生にはこの上ない魅力的な話かと……」
「ええから、早う言うてみ」
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