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新国家「大和」、日本より分離独立を宣言する。

Part8 『一部の良心ネットワーク』、奮起する。〜その7(2005.11.1)

この『治安維持特別法』により、デモ・集会等は一切禁止された。それらを煽動する者は逮捕、またそれらに参加し警察の解散警告を無視する参加者も逮捕、日本政府を糾弾するような印刷物は没収、印刷を依頼した者も、依託された業者も逮捕、インターネットを利用し日本政府への攻撃を行うものも逮捕、テレビ・ラジオでそれらを行うことも禁止、またそれらを許した放送局にも放送許可認定を取り消し、新聞・雑誌も同様であった。政府は徹底的に反政府運動を弾圧した。街中には多くの警官隊が常に市民を見張り、逐一反政府行動を取り締まった。日本政府は『一部の良心ネットワーク』に再三の翻意、組織解散を命じた。抵抗する『一部の良心ネットワーク』、しかし政府の強行姿勢に日々下火となる政府撲滅運動。このまま運動は終焉するのだろうか?日本は、資本主義の仮面を被った、政治家・官僚が操る社会主義帝国となっていくのだろうか?
政府は「大和および『一部のネットワーク』問題が解決した後、政治・経済大改革を行う」と空約束を繰り返す。その空約束に対して、一般庶民の『声なき声』だけが虚しく日本中に呼応した。

 官邸の幹事長室、森田と最中の二人――
「本当に……。本当にこれでいいんでしょうか?」哀しそうに問う森田
「政治は結果。二十年先、三十年先、どんな日本が誕生しているか。我々のやっていることを正しいかどうか判断するのは、後世の歴史だけ。あの五十年代、六十年代の学生運動を思い出してみなさい。あれが正しかったと言う連中がいまでもいようか。そういった連中の残滓が自虐史観を助長し、今日の日本を作り上げたと言ってもおかしくあるまい。もっとも俺だってそれを利用しているが……」
「しかし、私達のやり方は戦前の軍部となんら変わらない。いやあの時は世論も軍部に味方していた。日本がそんな雰囲気だった。しかしいま我々のやっていることは世論の弾圧だ。中世の絶対王政と同じです」
 最中はそれには答えず幹事長室の窓外をただ黙って見つめているだけだった。そこへ飛び込んできた福田官房長官――
「一大事です!小笠原村父島・母島が日本より分離独立を宣言しました!」
「なにい!小笠原村だと!?あいつらは日本政府に感謝すると言っておったではないか!それを今頃になって何を……」

(小笠原村長談)
私ら、小笠原父島・母島は日本より分離独立を宣言します。前は日本政府には随分お世話になり感謝している言いましたが、あれは全部嘘。小笠原の住民は日本政府に不満だらけです。一例を挙げましょう。
私ら小笠原の人間は日々病気に怯えて生活しておるのを御存知ですか?小笠原より本土まで千キロ、船で丸一日かかる距離です。空港なんて上等な物はない。医者もおらん。『医者はおらん、輸送手段は船だけ。しかも本土まで丸一日』で救急患者は死ぬしかないんです。申し訳程度に自衛隊が高速艇を用意してくれてはいるが、実際に本土の病院に担ぎ込まれるまで何時間かかるか御存知ですか?何度交渉しても答えはいつも同じ『検討する』……この間に何人の死なんでもいい人間が逝ってしもうたか……。それはあんたらも言うでしょう、『本土でも手遅れで死ぬ人間がいる。同じ事だ』となあ。しかし本土はいざ言うときに何でもある。救急車もあれば大病院もある。小さな開業医も腐るほどいる。私らには何もない……。
自然保護団体の方にも恨み節を聞いてもらいましょう。あんたらは『自然を破壊する空港建設断固反対!』言うて政府に陳情しておるようだが、私らの苦しみをおわかりですか?年に一度物見遊山に小笠原を訪れるあんたらに、小笠原住人のお気持ちがおわかりですか?直吉爺さんは社民党の土井さんに『我が理想のためには、平気で人を見殺しにする』と言うたが、あんたらも社民党と同じですなあ。別に私らは成田のような大空港を作ってくれとは言うとらん。緊急時にいつでも飛べる小型飛行機と、一日一便でも構わんから本土と小笠原を結ぶ定期便さえあればそれでいい。それでも反対されますか?世界中で最も美しい場所のひとつと言われている、ニュージーランドのクイーンズタウン、御存知ですか?人工僅か三千人の町、私ら小笠原よりほんの少し大きいだけ。そんな町でさえ、空港があるんですよ。空港があるから町が汚れるのではなく、空港の使い方を間違えるから町が汚れるんでしょう……。
もうひとつ例を挙げましょう。公共事業だけは随分増やしてもろうていますが、都の建設する住宅と民間マンションの家賃格差といったら……。小笠原住民の個人所得は本土に比べまったく低い。公営住宅に入るのと入らんのでは生活ぶりが雲泥の差。果たして日本政府は『本当に小笠原を必要』と思うてくれておるんですか?こんな不便な村が活性化せんのは当たり前。本土と隔絶された村、小笠原。アメリカの属州になった方がええ言う連中さえいる。グアムはすぐそこですからなあ。だから若者は村を出て行く。残る年寄りは生活苦に追われ、いつも死の恐怖に追われる。これを『片手落ち行政』言うんでしょう。
そんなとき直吉爺さんが大和独立国家を作る言いよった。私らは最初ぜひ父島・母島でやってくれと言うた。ところが爺さん『もし独立に失敗すれば小笠原村は閉鎖され、全住民は逮捕されるじゃろう。それは儂の本意ではない』言うて、そして『大和の分離独立が成功した暁には堂々と大和の一員になればええ』と、で『それまでは日本政府に従順なふりをしておけばええ』と……。
しかしなあ。私らは決心しました。直吉爺さんは『もうちょい待て』言いよるが、日本で頑張っている人達見ておったら、私らだけどっちに転んでもいい目するのは申し訳ない。それは卑怯者のすること。日本精神を持った日本人として、大和人として、本土で頑張る同胞を応援させてもらいます。日本政府の皆さん、攻めるなら攻めてみなさい。小笠原住民は一歩も引かん。ついでに言うておきますが、小笠原にいる警官も自衛官も都庁役員もみんな独立派、日本政府の言う事を聞く者はひとりもいません。本土の同胞よ、頑張れ!『一部の良心ネットワーク』の同胞よ、頑張れ!政府の弾圧に決して屈するな!

 さあこれに鼓舞された、反政府運動者・政府撲滅運動者、起死回生の小笠原村長檄文に、やっと息を吹き返した。逮捕されること覚悟で、デモ行進や街頭演説、インターネットに無数の政府撲滅スローガン、週刊誌各誌は連合して号外判を無料で配布、その数何と一千万部。新聞各社、放送局も黙っていない。日本全土、政府打倒・政府撲滅の大合唱。そして『一部の良心ネットワーク』、小康状態の活動が再開され、とうとう放送局フジテレビを占拠、いや占拠ではなく、フジテレビが『一部の良心ネットワーク』を招き入れたといった方が正しい。フジテレビはそのまま『一部の良心ネットワーク』暫定政府の最前線基地となるのであった。



以下明日に続く(土曜日の更新はありません)。

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